マンションなどの物件を内覧する際に、不動産業者はたいてい「当て物(あてぶつ)」を用意する。3件内覧するなら、1、2件目は3件目より少し劣る物件を顧客に見せる。顧客は最初の2件に煮えきらず、3件目に「これだ!」と自発的に決めるようになるからである。この手法だけで成約率は格段に上がる。顧客も「いろいろ見たけど一番いい物件を選んだ」という実感が生まれ、満足度が高くなる。しかし、これは相対的な比較で錯覚を起こさせているだけで、絶対的な比較ではない。素人だましの基本パターンと考えた方がいい。

 我々が始める新サービス「ロボット仲介」には「当て物」は存在しない。同一物件内の別住戸などとの比較は内覧時に提供される「ロボットレポート」で網羅するので、相対比較はレポート上で済ませておくことができる。

購入のコツはスピード勝負の「ヴァーチャル内覧」

 一方、内覧のコツは「一番乗り」をするしかない。日本では買い付けは早く入れた者が優先されるからだ。とはいえ、いつも物件を知った翌日の朝に見に行ける訳ではない。そこでお薦めするのが「ヴァーチャル内覧」だ。スマートフォンにはテレビ電話機能があるので、これを使って自分は行かなくても物件から実況中継してもらえばいい。リフォームする工事費用の見積もりは、中継のため部屋に行った業者に依頼してもいい。

 1つの住戸で内覧に要する時間は、たいてい10分ほどと実は短い。電気を点けて、クリーニングされた部屋の傷み具合いを確認し、眺望や内装や水周りを一通り見て回り、ドア・窓・収納を全部開け閉め確認をし、部屋の採寸をしたらほぼ終わってしまう。

 相続税対策で物件を購入する人には地方の方も多いので、このヴァーチャル内覧を利用してもらっている。スマホの画像はかなり鮮明で、我々はその場で買い付けを入れてもらっている。その方がコストパフォーマンスのいい物件がすぐ買えるのが不動産業界の実態だということを理解しないと、いつまでたっても買えなくなってしまう。

 

冷静な数値判断と、ホットな気持ちのはざまで決断

 足を運んで内覧した場合には「ロボットレポート」が購入支援材料になる。その物件の最近の取引価格、今売られている別住戸の面積と価格、物件自体の評価、周辺での位置づけ、物件の稀少性、人に貸した場合の賃料設定など、判断に必要な数字が並ぶ。このレポートは損得勘定の整理に使い、内覧では物件との相性を感性で判断する。冷静な数値判断と「買いたい」というホットな気持ちのはざまで決断することになる。

 また、このレポートには「買い付け推奨価格」が書かれている。売り出し価格通りを満額と言うが、売り主側の仲介業者へのヒアリングから満額でないと買えないと分かっている場合もあるし、売り急いでいるので現金決済がすぐにできることで値引き交渉できる場合もある。こうした売り主へのヒアリングは事前に済ませてあるので、仲介業者は買える最低価格を知っている。レポートの推奨価格を参考にしつつ、迷ったら仲介業者に相談しよう。話をすると気持ちが徐々に整理されてくるのが買い物する際のコミュニケーションというものだ。ここではロボットではなく、ヒューマンが役に立つ。

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