ただ、生命保険には現金を使ってしまうという欠点があります。一方、不動産はローンを組むなど、現金支払いを抑えながら同様に原資づくりができます。個人の場合と同様に、減価償却が使える不動産を法人で買えば、キャッシュアウトしない費用を計上して節税し、退職金の原資がつくれます。不動産は所有物件から収益を上げることができますから、さらに有利です。

預金滞留している内部留保を有効に使う

 優良な会社は、内部留保で現金を貯めています。銀行の借り入れをしなくてもいい状態になっている会社も多くあります。内部留保という法人の金融資産が日本全体で900兆円あるといわれています。この900兆円は塩漬けで多くは普通預金に入ったまま、活用されていません。

 役員報酬を高くすると所得税が高くなるため、多くの企業はとりあえず、内部留保として残しているのです。法人に残った資産は、いつかは個人に戻さなければいけないので、たいてい税金が安い退職金として使われます。

 しかし前述したように、所得税を節税しながら退職金を準備するほうが得ですし、所得税対策をすれば毎年の役員報酬を2倍にすることも可能です。

 「とりあえず内部留保で残しておく」という発想をまず変えなければいけません。内部留保を活用するのは、資本効率を上げる近道です。

 活用のしかたはいくつかありますが、私は経営者への貸し付けを提案しています。

 経営者に、市場金利と同じくらいの1%未満、例えば0.5%ぐらいの金利で貸し付けるのです。

 1人株主や同族役員しかいない法人であれば、金利を安くして法人から個人と、書類上動いているだけですみますが、株主がたくさんいる場合は、内部留保の使い道を決めるために、株主総会を開かなければならないなどの問題がありますので、ご注意ください。

 そのような場合は、内部留保を銀行に預金として残しながら、ローンを借りる「預金担保ローン」という方法もあります。預金を残したままなので、使ったわけではなく、新たな借り入れをしただけなので、貸借対照表上には影響を与えません。

経営者の「退職金」を増やす

 税制上有利な退職金を増やすために、役員報酬の額面を増やすことを提案しました。これで退職金を増やせますが、退職金の原資も利益の繰り延べでつくっておきます。

 先ほどの例のように、生命保険で退職金の原資づくりをする方法も一応コントロールが可能です。しかし、保険に加入して毎年保険料を払っていたのに2年後に赤字に転落。保険を解約せざるを得ない場合、解約返戻金が少なくなってしまいます。保険は解約の時期によっては、大きく損をする可能性があるわけです。

 その点、資産インフレをする不動産をいくつも持っていれば、法人の業績が悪いときには売却して益出しができます。資産インフレをするという条件から、基本的には資産を海外に持っていくことを考えたほうがいいでしょう。

 不動産のような減価償却資産では、減価償却費はキャッシュアウトしない費用になりますので、お金を使わないで、利益の繰り延べが可能になります。

 海外で資産を持っていると、ポートフォリオ上も安定します。ハワイは毎年少しずつ不動産価格が上がるといわれていますし、オーストラリアのゴールドコーストも値上がり傾向にあります。また、米国の空室率は平均で7%程で、築年の古い物件でも高い稼働率を示しています。つまり、先進国であれば、市場データや取引の仕組みがきちんとしているので、リスクをコントロールできるということです。

相続税納税を見据えた対策の道筋

 最後にまとめを記しておきます。

 まず役員や株主は所得税節税をしながら、手取り年収を2倍以上に増やします。この際、海外の不動産を減価償却のために使うので、超低金利の日本で会社の内部留保などを使って資金を調達して購入します。役員報酬を増やしておくことで、自動的に退職金も増やすことができます。こうして、個人の手元キャッシュを潤沢にしたら、相続税対策は容易です。収益不動産をローンを借りながら購入すれば相続税は大幅に軽減できますし、納税資金を手元に残しながら、資産の分割も容易になります。

 ここまで分かった以上、相続人が苦労したり、資産の分割でもめたりすることはないようにしたいものです。退任の花道は最後まで自分で気を配っておくことが資産家の流儀だと考えます。

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