自宅の活用で一番いいのはこうした資産形成ですが、不動産価格が下落基調の時には難易度が高くなります。現在はマンション価格も天井に近いので、法人オーナーの方には自宅を役員社宅として経費化することをお勧めします。これは新たに購入しなくても、今住んでいる住宅でできるので、経営者なら誰でも検討に値すると思います。

 また、一定規模以上の不動産投資をされている方は法人をつくる方が、キャッシュフローを改善できます。高い所得税から安い法人税に移行できるからです。そんな方やオーナー社長の方に、いち早く取り組むことができる方法を伝授しましょう。

自宅を役員社宅にして、自分が借りる

 マイホームは税制上の優遇がたくさんありますが、役員の場合は、ご自宅を役員社宅にするとそれ以上のメリットが受けられることがあります。

 役員に社宅として貸した場合の家賃は税務通達で計算方法が決まっています。固定資産税の課税標準額に基づき計算しますが、これが市場家賃の平均8割引きになっています。つまり、2割負担ということです。なぜこうなるかというと、公務員社宅と同じ算出方法だからです。公務員社宅の家賃が安過ぎる問題はメディアでたびたび取り上げられますが、役員はこれと同じ条件を自分で使うことができるのです。

 私たちは「不動産ビッグデータ」を分析して仕事をしていますので、多数のサンプルから、「8割減」以外についても様々な「コツ」を把握しています。例えば、家賃は固定資産税の課税標準額に基づく計算なので、都心のタワーマンションの中には9割下がる物件もあります。ちなみに、こうした一定の家賃負担をしない場合、不足している賃料相当額が給与とみなされて課税されます。これだけメリットがあるのですから、きちんと家賃は計算して支払って下さい。

 次に、社宅をケース別に検討していきましょう。

持ち家で戸建の場合、建物部分だけを法人に売却

 この場合、社宅化した方がいいケースが非常に多いです。マイホームの最大の税制優遇は3000万円の譲渡所得控除です。ご夫婦で共有なら、6000万円までの売買益は無税になります。税率は20%なので、最大1200万円の効果となります。しかし、戸建の場合、建物部分の評価は耐用年数でほぼゼロになります。1億円の豪邸でも木造建築は22年経過したらゼロになるので、土地が相当値上がりしなければ譲渡益は生まれません。こんな場合がほとんどなので、個人で持つ意味がなく、法人で経費を落とした方がいいことになります。

 経費で落とせるものは様々あります。建物の減価償却、ローンの金利、固定資産税・都市計画税等の税金、火災保険料、修繕費などの維持管理費がすべて経費として計上できます。個人では経費にできないことが多いので、メリットが大きいです。

 先ほどの家賃の計算には、「小規模な住宅」という面積制限があります。木造の戸建の場合は建物の床面積が132平方メートル以下が条件になります。これを超えると、計算式が変わって、小規模な住宅の約3倍になります。しかし、それでも市場家賃の70%程度になるケースが多いので、社宅化は意味があります。

 また、「豪華社宅」と認定されると、市場並みの家賃相当額になります。豪華社宅は240平方メートルを超えた物件に総合勘案して判定するとされていますが、この認定は実際に行うことは難しいと思われます。気になるようであれば、市場家賃も査定してもらえばいいですが、戸建の場合には面積が大きくなるほど、平方メートル単価は下がる傾向にあります。結果的に、家賃は土地を含めた物件価格の2~3%とかなり低い金額になるのが一般的です。2億円の豪邸でも月30万~50万円程の家賃と想定されます。

 現在の自宅を法人所有にするためには、建物のみを簿価で法人に売却します。家賃は建物に発生するので、土地まで法人が購入する必要はありません。代々引き継いだ土地の場合は譲渡益が95%とみなされる場合になりやすく、これに20%の税率がかかるので、売買金額の約2割のキャッシュを失うことになります。こんな税金を生まないためにも建物だけを売却するのです。この場合、相続時のメリットがあるので、税務署に土地の無償返還届を提出の上、法人から個人に地代(土地の固定資産税の2~3倍相当)を支払います。

 この方法のネックになりそうなこととしては、法人側でローンが十分に借りられない場合が考えれます。しかし、今の異次元の金融緩和の中で、不動産に担保を付ければ住宅ローン並みの条件で借りることは難しくありませんので、金融機関に相談をされてみて下さい。

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