中でも人気があるのは、Tシャツだ。「お客さんとのキャッチボールのようなもの」として、サヨナラ勝ちをしたり新人投手が初勝利したりするたびに、翌日にはネットで記念Tシャツのデザインを公表し、枚数限定で発売している。

 「タイミングが遅れると、印象が薄れてしまう。スピードを重視している」(松田オーナー代行)。迅速に発売するため、Tシャツをプリントする自社工場も持っている。

 特に、リーグ優勝決定後のビールかけで選手たちが着ていたのとほぼ同じデザインの「ビールかけTシャツ」は、大当たりした。当初は6万枚を準備したが1日で完売し、合計約24万枚を売り上げた。

約24万枚を売り上げる大ヒットとなった「ビールかけTシャツ」

 カープを含めプロ野球の経営状況に詳しい公認会計士の福留聡氏は「放映権収入の減少には全球団が頭を痛めている。その中でカープが巧みにグッズ販売を伸ばしたのは、親会社がない分、自分たちで稼ぐという意識が強かったことがあるだろう」と見ている。

地元企業とのコラボ商品も好調

 新しいグッズのアイデアは、地元のビジネスマッチングフェアがきっかけで生まれることもある。マスキングテープはその一例だ。球団マスコットの「カープ坊や」や選手の似顔絵などがプリントされたこのヒット商品は、今では年間5万本も売れている。製造するのは、食品用ラベルなどを手掛ける広島県福山市の丸天産業だ。佐藤紘之常務取締役は「13年11月のマッチングフェアで、当社のマスキングテープに興味を持ってくれた人がいた。それが松田オーナーだった」と振り返る。

選手のイラストを使ったマスキングテープも人気

 その後、他球団のマスキングテープも取り扱うようになり、全社の売り上げはカープグッズ発売前の1.5倍になった。「従業員のモチベーションも上がった。カープグッズを作っていることは、社員全員の自信にもなる」(佐藤常務)。

 グッズの幅が広がることは、製造する企業にも好影響を与えている。広島県内では、球団にロゴやイラストの使用料を支払ったメーカーが、自社で販売するライセンス商品も目に付く。球団側は原則として1商品につき1企業というルールを設けているが、バリエーションは豊かだ。

 ふりかけを製造販売する田中食品(広島市)のライセンス商品には、球団のオリジナル商品に勝るとも劣らない遊び心がちりばめられている。選手の似顔絵にご飯粒をつけたり、ロゴだけでなくクイズや豆知識もパッケージに印刷したりしている。優勝記念の限定商品には、マツダスタジアムのペーパークラフトまでつけた。

スタジアムのペーパークラフトが付いたふりかけセット。優勝記念の限定商品だ

「キャラクターを印刷するだけでは不十分。ふりかけを食べる人たちにコミュニケーションのきっかけも提供したい」(田中茂樹社長)