立体交差の道路に「影」?!
今和泉:現行の『街の達人』の前身、『シティマップル』は、私が最も傾倒した地図でした。こうした色合いの工夫における当時の最先端で、立体の建物イメージや、トンネルの進入口や立体交差に影がついていたりと、誰も気づかないような視覚的な工夫をしていたところにグッと来ていました。
山中:グッと来たんですか。たしかに誰も気付かなそうです。
吉田:進入口、立体交差の影、あー! やりました。
今和泉:高校生の当時、首都圏全都県分を買うのに数千円の散財はかなり痛手だったのを今でも覚えていますが、それでも揃えたものが、今でも貴重な資料になっています。
それからこのシリーズは『街の達人』になり、影はなくなり、ハッキリした色使いになり。年齢層が高い人にも見えるよう、太い文字と濃い色使いで視認性は上がりました。そしてフォントの刷新、フォークを使ったのも早かったわけですね。つまり『街の達人』は、昭文社のデザインの実験台的な役割も負っているのでしょうか。
市川:そうですね。新しいデザインや表現を試す際には、シリーズを丸ごとフォントや仕様(デザイン)を変えて、反応を見ながら、必要に応じて他のシリーズに反映させています。
ポケットサイズの地図の進化
山中:そしてポケットサイズの都市地図ですね。思えば、スマホが登場するまでの間は、この手の地図に大変お世話になりました。しかし本の装丁も、中のデザインも、いつのまにかどんどん変わっていたのですね。
今和泉:この3つの変化は興味深いですね。一番左の『文庫判 東京 都市図』は装丁がいかにもビジネス向けだったのが、真ん中の文庫地図では女性向けの雰囲気を漂わせるデザインになりました。地図も、『文庫版…』は道路のフチが薄いグレーだったのが、その次ではより黒く濃く描かれています。
市川:おっしゃるとおりで、『文庫地図』へのリニューアルでは、柔らかいイメージで作りました。街中で地図を見るとき「いかにも地図を見てる」感じが出ないよう、読み物に見えるような少々オシャレな装丁にしました。このとき地図デザインもカラフルに、メリハリをつけました。
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