山中:実はさきほど、昭文社さんの最寄りの駅前で急に仕事をせねばならなくなって、「PCが開けるところはないか」と。たまたま持っていた冊子地図で探したらファストフード店が見つかって、大変助かりました。
今和泉:まさに、今回の企画の前振りみたいな話ですね。
山中:スマホで検索すれば、と思いつつも、屋外で今日みたいに日差しがきついと画面が見にくいんですよね。そこで、地図を開いてパッとファストフードのお店のアイコンが目に入ってきて、「あ、ここだ」と分かる。ネットだと「PCが使える店」「駅前」→「ファストフード店」で検索、と、脳内でなんとか言語化しないと検索できないじゃないですか。「自分の検索条件を言語化せずに視覚で探せるというのは、案外ありがたいな」と再認識しました。
昭文社・和田史子さん(広報担当、以下和田):ありがとうございます。
今和泉:ネット地図の代表の一つ、グーグルマップは、余計な情報が削ぎ落とされたプレーンな地図です。目的地の位置や経路をピンポイントで出しますが、それ以外の情報は控えめです。いくら大きな画面で見てもネット地図の示す範囲は狭く、広い範囲を映そうとするとほとんどの情報が削ぎ落とされます。紙地図は「広範囲を詳細に」見ることができ、頭の中で曖昧だった目的物を見つけることもできるのが魅力ですよね。
紙地図の生き残りのカギは「一覧性」
市川:紙地図の意義は、広範囲を見られる「一覧性」が一番大きいと思っています。特に大きな範囲を映す小縮尺(10万分の1、20万分の1)の地図は、むしろこれから重要視されていくのではないかと思っています。カーナビで同じ縮尺で映すと、道路の線が数本入る程度で町名も見えませんが、紙地図だと町名だけでなく周辺の施設だけでなく、途中の街の大きさもなんとなく分かります。
今和泉:一覧性はかなり大きいですよね。「目的地に最短で行く」だけでなく、別の目的を見つけたり、最短でない良い経路を見つけられたりしますよね。
山中:この前、福岡市から糸島市(福岡県)の有名なカフェに行こうとして、カーナビの通りに走ったら、延々と山の中を抜けて突然海岸に出るルートでした。時間は短いんでしょうけど、海沿いのリゾートに向かうにはおもしろくないルートで、海岸伝いに行ったほうがずっと風景が良かったはず、とあとで思いましたっけ。
今和泉:ああ、九州大学の伊都キャンパス横を抜けていく道ですね。
山中:何で知ってるんですか。
今和泉:人間は、機械的に「最短で目的地に行く」だけが良いとも限らないんですよね。そこで一覧性が重要になる。
吉田:我々の地図、特に、一枚モノの地図(大判の都市地図)は、一覧性の極みです。東京のものだと、たとえば『都市地図 東京全図』です。
今和泉:うん、これは優れものです。これの東京都心拡大図は、かなり広い範囲が載っていて、ビジネスパーソンにはオススメです。
山中:見たところただの地図ですが…どこが特徴なんですか。
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