路線図のもう一つの課題は、地域によっては複数のバス会社が入り混じり、バス会社の路線図ではバス路線の全体像がつかめないことです。これに対して、その地域を走るバス路線を会社にかかわらず全て載せる、という動きがありました。早くは1980年代から「東京都内乗合バス・ルートあんない」という首都圏各県ごとの路線図本が、各都県バス協会から出版されていました。これが少しずつ全国に波及し、現在はバス協会や行政だけでなく、市民団体やNPOが路線図を作る動きが広がっています。これについても、のちほど触れます。
自治体やNPOが工夫を凝らす
「どこから、どこへ、どのくらいの頻度で走っているのか」を、膨大な情報を整理して伝えるのが路線図の課題ですが、一方で、バス停そのものへの誘導も難問です。
地下鉄駅の駅では、地上に出なくても、どういった系統のバスがどこの乗り場から出るか、案内を出している例もあります。さきほどの本郷三丁目駅前ですが、バス停のある地上にいてもバス停の全体像は分からないものの、地下に降りるとこうした看板で一目瞭然、という“不思議な”ことが起きています。東京都交通局によれば、こうした看板は約20カ所に設置され、今年度中にさらに40前後の駅に設置される予定だそうです。
路線図にせよ、バス停にせよ、ひとつのバス会社で解決するのは難しい問題です。大都市部では、複数のバス会社が乗り入れるため、1社が有効な施策を打っても、都市圏単位で見れば「曇ったガラスの一部を拭いた」くらいの効果になってしまいます。
となると、どこが動くべきなのでしょう。各都道府県のバス協会は、バス会社間の調整機関ではありますが、バス乗り場を整えるのは、その用地を持つ自治体かバス会社です。自治体によっては工夫している事例もあります。
こちらは埼玉県三郷市の三郷中央駅です。案内板には、乗り場案内と路線ごとの発着時間が表示されています。三郷市は後述の表の通り、市内を走るバス会社が多く、三郷中央駅にも5社のバスが乗り入れます。これらを統合的に案内するためには、バス会社の裁量に委ねることは難しく、ここで三郷市の手腕が発揮されています。
バス停に案内があるのは当然ですが、大事なのは「バス停に行く前に案内があるか」、という点で、この駅では駅舎内の、改札を出たところに、どん、と案内板が設置されています。
そして、見逃せないのは地元のNPOや、バスマニアの人々の努力と工夫です。
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