
たとえば上のような表示は、大きな駅ではよくあります。東口、西口の両方にバス乗り場があることが示されながらも、どのバスがどちら口なのかは分かりません。ただ、バスは鉄道より路線数が多いため、限られた掲示エリアに全路線を載せるのは難しいのも事実です。ほかにも、バスターミナルが複数箇所に、しかも駅を挟んで逆方向にある場所も存在します。バス停間の移動に、階段を昇り降りして5分以上かかることも珍しくありません。
正確かつ具体的な行き先を表示しようとすれば、情報量が多くなりすぎる。整理してしまうと、地元の人以外はガイドの役を果たせない。地域の需要に密着し、きめ細かい交通サービスを提供するからこその悩みです。
バス路線図の苦難
こうした課題に、バス路線図はどうやって応えてこようとしたのでしょうか。
実はわりと最近まで、停留所を黒い1本の線で結び、位置関係だけを示す路線図が一般的でした。いわば、情報の編集を諦めていたと言っても良いでしょう。
路線図の進化を、例を見ながら追っていきたいと思います。
これは、90年代まで全国の民営バスで主流だったスタイルですが、今でもこのタイプの路線図を提供している会社は多々あります。
停留所の位置関係は分かるものの、どの系統がどこに行くのかは分かりません。しかしその後、主に都市部で、系統ごとにカラフルな色分けで描かれた路線図を各社が作るようになります。
こちらは、1系統ごとに1本の線を色別に示した路線図の例です。実際にはこれに路線番号が添えられます。どの路線がどこに行くか、どこの区間に路線が多いかが明確に分かるようになりました。
しかし、ご覧の通り、路線が多くなるにつれて目的の路線が探しにくくなるのも難点です。また、路線によって頻繁に来る路線もあれば、1日に数本しかない路線もあり、線が多いからといって便利とも限りません。大都市部の鉄道と異なるのは、路線バスの場合、本数の多い路線は限られる、という点です。
こちらは、同じ方向の複数の系統を、1本の線にまとめ、本数や運行間隔が多い区間を太く、そうでない区間を細くしたものです。同じくこれも実際には路線番号が添えられます。
本数の多い路線を太く、少ない路線を細く、あるいは点線で示す手法は、一部の公営バスの路線図で見られましたが、複数の路線を集約する編集は、このあと紹介する個人やNPOによって進められてきました。
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