サイトアクセスを増やせば売り上げは必ず上がるのか?
ではなぜ、多くのDSPやディスプレイ広告自動作成ツールなどのアドテクノロジーは、クライアントの売り上げを最大化するコンバージョン測定機能を持っていないのか。あるいは、重視するような形になっていないのか。実は、「クリック率の最適化」は広告代理店やDSPにとって非常に都合が良いからなのだ。
DSPのほとんどは、クリック課金型であることが多い。クリック数が多いほど自分たちの儲けにつながるし、クライアントは広告予算を早く消化してくれる。また、クリック率の高いクリエイティブのノウハウを蓄積した方が、クライアントに説明しても分かりやすい。いくつかのDSPやアドテクノロジーでは、「コンバージョン率の最適化」ができるシステムもある。ただそのシステムを使うためには、クライアントのサイトにコンバージョンタグを設置することが必要だし、正しく設置されているかを確認する必要がある。単純に時間がかかるので、積極的に「コンバージョン率の最適化」の機能を勧める営業担当者は少ない。
そもそも、コンバージョンを重視して考えていくと、今までのネット広告の定石がひっくり返ってしまう場合が多い。繰り返しになるが、クリック率が高いクリエイティブであってもコンバージョン率が悪いケースは少なくない。分かりやすくクリエイティブの事例を見せて説明しよう。
Aは写真のインパクトやキャッチコピーのインパクトでユーザーを引き込もうとしているディスプレイ広告だが、コンバージョン率はとても悪いのである。逆にBのように商品画像を分かりやすく掲載して、オファー(ユーザーのメリット)をはっきりと特定するほうが、一定のクリック率を出しつつ、コンバージョン率を高められる。結果として、Bの方が広告の費用対効果(CPA)は良いのである。
クリエイターというものは、ディスプレイ広告においても自分の色を出したがるし、格好よくて目立つクリエイティブを考えがちだ。その結果、コンバージョン率を上げることまで考えていないケースもたくさんある。こういうことを経験則的に知っている人間であれば、クリック率だけを追い求めた「最適化」がおかしいということに気が付く。
「クリック率の最適化」が万能だと考える広告代理店は、クライアントの成果について責任を持ってこなかったケースが多い。そうした広告業界の流れが今のアドテクノロジーにも受け継がれていることが多い。その一つが「クリック率の最適化」を前提として考えられたDSPなのである。
もっと命がけでクライアントの売り上げ最大化に挑む広告マンが増えてほしいし、このコラムを読んで賛同してくれた方は、ぜひ「コンバージョン率の最適化」を目指してもらいたい。
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