DSPがもたらした「クリック率の最大化」のわなとは?

 10年前のディスプレイ広告は、クリック率が1%を超えるものも多かったが、最近のディスプレイ広告のクリック率は0.1%程度である。10年前と比べて広告の掲載枠が膨大に増え、ユーザーがバナー広告を目にしたときに自分とは無関係の情報として無意識に広告を無視する「バナーブラインドネス」の現象が顕著になったことが要因である。ユーザーは意識して広告を見ないようにしているのではなく、そもそも認識すらしなくなったのだ。こうした要因からクリック率は大幅に低下し、枠売り広告の代名詞であるディスプレイ広告は以前ほど売れなくなったのが現実だ。

 そもそも、広告代理店やクライアントにとってディスプレイ広告は、ネット広告を出稿した後にクリエイティブの調整が難しいという大きい問題も持っていた。例えば、ディスプレイ広告の代表的な枠である「Yahoo! JAPAN ブランドパネル」の場合、掲載期間は1週間である。広告出稿後すぐに効果測定をして、もし初速の成績が悪かった場合、クリエイティブの差し替えを図ろうとしても2、3営業日かかってしまう。これに限らず、ディスプレイ広告は掲載期間が1週間程度と短い期間である場合が多いため、たとえ差し替えが可能であったとしても、掲載期間がほとんど残されていないというのはよくあることだ。そうした中で、DSPは必要に応じてすぐに差し替えできるという、とても便利なシステムである。

 ただその一方で、このDSPによる「最適化」にはわながある。多くのDSPにおいて、「最適化」というのは「クリック率の最適化」を指すからだ。これはディスプレイ広告の自動作成ツールについても、同じことが言える。

 断言するが、「クリック率の最適化」はクライアントの売り上げ拡大に直結しないケースが多い! 具体的な事例を参考に説明しよう。

 これはある企業が広告出稿を200万円行った時の結果である。見てもらうと分かるが、クリック率を最適化するとクリエイティブAに配信が偏る。しかし、最終的なコンバージョン率を見るとクリエイティブBの方が広告の費用対効果(CPA:コンバージョンの獲得単価)としては勝っていたのだ!

 この結果を見ると、クリック率を最適化するだけでは、必ずしもクライアントの売り上げ最大化につながるわけではないことが分かる。もっと言うと私の経験則上、クリック率が高いクリエイティブはコンバージョン率が低いケースが多い。逆にクリック率が低いクリエイティブはコンバージョン率が高くなる可能性が高い。商品画像やオファーをしっかりと伝えて、そこそこのクリック率を獲得しつつ、コンバージョンを獲得するバランスの良いクリエイティブが一番良い。

 DSPやディスプレイ広告制作ツールの営業マンがそこまで考えて「最適化」という言葉を使っているかどうかを見極めないと、後でとんでもない結果が生まれ、大騒動となってしまう。「クリック率の最適化」だけを追い続けていると、クライアントの命のお金ともいうべき広告費を無駄遣いしてしまう可能性が高くなる。

 クライアントの目的はあくまでも売り上げを増やすことである。決して、サイトをたくさん見てもらうことではない。ちょっと考えればそんなことは当たり前なのだが、広告代理店もDSP企業もクリック率を最適化しようとする傾向がある。さらに言うと、コンバージョンまで責任を持って運用していない。

 広告業界には「でも広告の価値はCPA(コンバージョン1件当たりにかかる費用)だけじゃないからね~」という“CPA否定主義者”もいる。しかし、もしあなたが自分の会社・自分のお金でディスプレイ広告を出稿したとして、クリック数が1万回なのに、コンバージョンが0件だった時、あなたは喜べるだろうか?

 広告代理店はたとえクライアントが「サイトアクセスを増やしたい」と言っていたとしても、その裏には商品、サービスの売り上げを増やしたいというゴールがあることを忘れてはならない。サイトアクセスが増えるだけで、クライアントの売り上げが増えるなんてことは決してない。商品、サービスが売れて初めて、クライアントの売り上げは増えるのだ。ここを履き違えては絶対にダメだ!