不正の背景に電通のビジネスモデルも

 誠実な広告代理店はそもそも、クライアントに約束した成約率を達成できなかったり、広告掲載開始日を間違えたりしないように万全の体制で望むが、想定外のことは起きてしまう。そうなると、まず行うのは謝罪だ。そして「目標不達をどう挽回するのか?」を具体的に訴えるのが真の広告マンだ。

 実際、私も最初に「やずや」のネット広告プロモーションを担当した際は、目標にまったく到達しない散々な結果だった。その際に私はすぐに謝罪をし、その失敗から得られた知見を基に挽回策を提案した。幸運にもクライアントに私の姿勢を評価していただき、次につなげることができた。今や「レスポンスの魔術師」と呼ばれるようになった私だが、そんな私を産んだのはこうした『失敗』だったと言っても過言ではないだろう。もちろん、努力もしているが…(笑)。最初から魔術師だった訳ではない。大事なのはその問題やミスをどう繰り返さないかを考え抜くことなのだ。

 ただ、今回の電通問題の背景を考えると、もし不正があったとされるネット広告部門のスタッフ数が十分だったら、もうちょっと事態は変わっていただろう。今回の事件は、それができない今のネット広告を取り巻く環境が生み出した悲劇だという側面も伝えておきたい。

 電通のビジネスモデルは「メディアマージン」というもので、テレビや新聞などマスコミの広告枠のように1度の出稿のグロス金額が高ければ、担当部署に多くの人員を配置できる。しかし、ネット広告では残念ながらそこまで多額のグロス金額が発生することはない。それにリスティング広告を出稿する場合には、広告が掲載されたら終わりということではなく、掲載されている期間中、担当者がベタづきで管理、調整をしなければならない。

 その人件費をメディアマージンのビジネスモデルで捻出することができるのか? マスメディア向け広告が主体の総合広告代理店では、ネット広告の利益率を上げることにあまり注力しないことは往々にしてある。利益を生み出さなければ、人を充てることもできない。広告代理店はその部分をそろそろ考えていかなければならないし、クライアントもネット広告は運用費用がかかるという事実を理解した上で議論するべきと考えている。