クライアントも費用対効果への意識が甘過ぎる!

 ココまでの話を読んで、もしかすると「ネット広告はコンピューターのシステムで管理されているので、インチキができないはず。昔、テレビ業界であったCM間引きなんてことは絶対にないんじゃないか?」と思った人もいるだろう。しかし、それは大間違い。インチキをすることはできる。ネット広告業界に長く身を置く私が言うのだから絶対だ(笑)。

 不正ができるのはどうしてか? その理由は、リスティングなどの広告管理画面をきちんと見ているクライアントが極端に少ないからだ。逆に言えば、私が担当している費用対効果に厳しい通販クライアントであれば、こんな出来事は3日で発覚する。広告マンもクライアントも命がけで数字を毎日チェックするので、異変があればすぐに発覚するからだ。

 広告代理店はクライアントに対して、発注どおりの内容で広告が掲載されたことを報告するのは当たり前だが、その報告を待っているクライアントが多い点は理解できない。その気になれば、クライアント側でもWEB効果計測ツールなどで掲載状況などを簡単に把握できる。今回の電通の問題は、大手クライアントの費用対効果に対する意識の甘さも一因にある。電通も電通だが、トヨタ自動車も腑抜けた気持ちでいないとこんな事態にはならない。

 元々、総合広告代理店のほとんどの広告マンや一般の大手クライアントは、広告の費用対効果を考えたことがなかった。本来広告とは、マーケティング目標に対する効果を考慮して設定するべきで、最初に予算ありきなのではない。マーケティング目標ありきで、それを達成するための予算を考えるのがクライアントの仕事だ。どの広告代理店にいくら予算を配分するかを決めるのが宣伝部の仕事ではない。

 例えば1億円の広告予算をかけたなら、1億円以上の利益をもたらす価値を目標とするべきである。クライアントが費用対効果の目標を設定すれば、それ以降は広告代理店の仕事だ。その目標の達成率を測定して、クライアントに報告や改善提案を行う。トヨタ自動車といえば、“カイゼン”で世界トップの自動車企業となり、広告についての改善も当たり前のことのはずなのだが、なぜか広告の費用対効果は軽視され、今回のような騒動になってしまったのだ。

 これまではクライアントが広告の費用対効果についての態度を玉虫色にしていたこともあり、日本の“マスメディア主体”の広告業界は費用対効果や効果測定について曖昧にする慣習があった。

 広告の評価基準が曖昧だった時代から、効果測定により費用対効果を厳しく評価するように変化すれば、つまりはより結果・責任を求められるようになれば、ぶっちゃけ広告業界は大変だしつらい。私が仕事をしているネット広告を含むダイレクトマーケティングの世界では、そのつらい世界の中で日々格闘している。だからこそ、今回電通がやったことはダイレクトマーケティングの世界では考えられない。こんなことをしてしまえば、費用対効果が悪化してしまうのは確実だからだ。そんな自分の首を絞めるようなことを絶対に私は行わない。費用対効果が全てなのだ。