テレビの「権威」がブランド価値を高める

[画像のクリックで拡大表示]

 ネット広告は根本的にブランディングに向いていない2つ目の理由は、テレビCMに比べてネットには“権威”がないからである。ディスプレイ広告の枠サイズや位置も所詮“雑報”レベルなのだ。

 ネット広告というのは正直少額で誰でも出稿ができる媒体である。一方、テレビCMは最低でも数千万円、場合によっては億単位の広告費が必要となる。新聞15段広告もそうだ。だからこそ、こうした媒体には“権威”があるし、極端な話でいくと、フリーペーパーに広告が出ていたとしても、これは“権威”がないのでブランディングにはならない。

 さらに、効率の話をするとすれば、「ブランディング広告」においては、テレビCMの方が一人あたりのリーチ単価が安い。全画面を独占できるから当然リーチも大きいし、何より圧倒的な露出度があるため、この時代になっても未だにブランディングとして最適な媒体はテレビCMなのである。“権威”があって圧倒的な露出が図れるテレビCMだからこそ、レスポンスの「倍増効果=ドーピング効果」が見込めるのだ。

 私はかつて、売り上げが数百億円ある通販会社、やずやの「ブランディング広告」と「刈り取り広告」の両方を手掛けていたことがあるのだが、「ブランディング広告」のテレビCMを打つとレスポンスの「倍増効果=ドーピング効果」が見込めることが分かっていたので、「ブランディング広告」のテレビCMを打つ時は同時に「刈り取り広告」を一気に投下していた。

 つまり、ネット広告・折り込みチラシ・インフォマーシャル・新聞つかみ・DMなどに広告費を一気に投下するのである。そうすることで、テレビCMの莫大な広告費をペイ出来るほどのレスポンスを取ることが出来たのである。

◆勝ち組通販が必ずやっている超シンプルなノウハウ(2)
「ブランディング広告」と「刈り取り広告」のクリエイティブのトンマナは“二重人格”!

 結論からいうと、「ブランディング目的の広告」と「レスポンス目的の広告」はクリエイティブのトンマナ(トーン&マナー)を完全に分けるべきだ。そう、“二重人格”でいいんだ。

 一番良くないのは「ブランディングをしながら、レスポンスをとれる広告」を期待すること。それをやるとどっちつかずの中途半端な広告になってしまう。例えるなら、「純情だけど色っぽい女性がいい」と言っているようなものである(笑)。

 実際に、勝ち組通販では、テレビCMなどの「ブランディング広告」と、ネット広告・折り込みチラシ・インフォマーシャル・新聞つかみなどの「刈り取り広告」のクリエイティブのトンマナは“二重人格”になっている! この“二重人格”戦略が、最も効率が良い。

 「ブランディング広告」はレスポンスがゼロだと割り切ってクリエイティブのトンマナを“超上品”に、逆に「刈り取り広告」はクリエイティブのトンマナを“超コテコテ”に分けること、これが勝ち組通販のやり方なのである!

 そこを心得ていない広告マンは「ブランドの世界観のトーン&マナーを統一させるのがマーケティングの価値でしょ!」などと言っているが、そんなものはただのキレイゴトにすぎない。

 事実として、“二重人格”戦略の方が売れているのだ。「ブランディング広告」と「刈り取り広告」のクリエイティブのトンマナは“二重人格”で良いのだ。媒体ごとの特性をしっかり理解して、役割をしっかり定義して振り切る、これが重要なのである!

“二重人格”のケーススタディー(1):山田養蜂場

※広告のイメージを筆者が独自に作成

“二重人格”のケーススタディー(2):ファンケル

※広告のイメージを筆者が独自に作成

次ページ ユニクロ、ソフトバンクも実践する