「ブラウザやデバイスの機能か、あるいは第三者機関によるサービスなのか、EC(電子商取引)のユーザーが“ワンクリック”でどんな商品でも購入できるようになったらECの世界は変わる。これまでの何十倍の規模になる」
2013年時点で、とある取材を受けたとき、私はこのように答えたことがある。この予測が今、定期受注機能を持つ「Amazon Pay」の台頭により、現実味を帯びてきた。EC市場の起爆剤となるイノベーションが始まろうとしているのだ!

アドテク20年来の技術革新を上回る画期的機能が続々と!
私が2013年から示していたEC市場拡大の条件は2つあった。
一つは、ブラウザがオートコンプリート機能をもつこと。一度ブラウザで申込フォームに自分の個人情報を入れれば、ECサイトに行ったとき、自動的に登録した情報をフォーム入力してくれる。これは、ブラウザだけでなく、テレビ、パソコン、スマートフォンなど、個人情報を持たせることができるデバイス側でも実現できる可能性がある。
もう一つは、JADMA(日本通信販売協会)のような第三者機関が、通販会社が利用できる個人情報のデータベースを構築すること。ECサイトで商品を購入しようとするユーザーの情報が、このデータベースを基に申込フォームへ反映されることによって、ユーザーが“ワンクリック”で申込みが可能な仕組みができる。
アドテク全盛期とも言えるこの20年間、ユーザーは色んなネット通販のサイトで個人情報を何度も入力してきたが、これがECサイトにとってネックだった。申込フォームの入力が完全に自動化されれば、EC市場の規模は爆発的に拡大すると考えていた。
まさに今、これが実現されそうな流れが生まれている。そう、起爆剤となったのは2016年のEC業界のホットトピックスとなった定期受注機能を持つ「Amazon Pay」の台頭である。
定期受注機能を持つ「Amazon Pay」の普及が進む日本のEC業界
総合オンラインストアAmazon.co.jp(以下、Amazon)が発表した「Amazon Pay」のリリースが、2016年のEC業界の話題をかっさらったのは記憶に新しい。ユーザーのAmazonアカウントに登録された配送先やクレジットカードの情報が販売事業者サイトでも利用可能であるため、ユーザーにとっては定期商品の購入に必要な個人情報を入力する手間が要らず、スピーディーに注文を完了できるようになった。これにより、カート離脱率(商品をカートに入れても購入までには至らないユーザーの割合)の改善につながると、販売事業者は大きな期待を寄せていた。
Amazonが発表したこの新たなサービスは、ここ数年間の間で最もインパクトのあるEC業界のニュースと言える。Amazon以外の主要なECカートシステムは、Amazon Payとの連携に向けた取り組みに忙しい。例えばecbeingやFutureShop、EC-CUBEといった、業界屈指の主要ECカートシステムが名を連ねている。Amazonの発表によると、Amazon Payと連携したECカートシステムの実績数は、日本での提供開始後16か月で1000社以上となった。
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