結論から言うと、大手広告代理店がキャンペーンスタート前に必死に繰り返している「マーケティングリサーチ」なんて無意味である。キャンペーンスタート前にやるべきなのは、広告費の10%程度を使って、テストマーケティングとして「A/Bテスト」を実施することだ。A/Bテストとは、複数の広告クリエイティブ(制作物)を同じ条件(時間帯、頻度など)で露出し、それぞれのユーザー成約率から、最も効果の高いクリエイティブを測定すること。一方、大手広告代理店が膨大な時間とコストをかけ続けているマーケティングリサーチで分かることは仮説に過ぎず、コストはA/Bテストに投下すべきなのだ!

 大手広告代理店は、キャンペーンをスタートする前に、多くの仮説を立ててマーケティングリサーチをする。「いろんな調査をした上でリスクなく運用を始めたい」「キャンペーンの成功率を上げたい」という気持ちは分かるのだが、マーケティングリサーチのデータでは本当に売上拡大につながっているのかどうか断定できない要素が多過ぎて、私にとってはもはや“死んだ数字”にしか見えない。

 私は大手広告代理店から広告キャリアをスタートし、ネット広告の世界に身を置いてもう18年になる。A/Bテストの重要性をこれまであらゆる連載コラム・取材で発信してきたが、元々はマスメディア(オフライン)の広告の世界にもいたことがあって、こうしたマーケティングリサーチを担当した経験がある。両方経験しているからこそ伝えたいマーケティングリサーチの無意味さについて、基本的概念を押さえながら説明しよう。

マーケティングリサーチとは?

 まず、マーケティングリサーチとは何かについて簡単に説明しよう。それは、企業が商品開発やマーケティング施策を行うに当たって、キャンペーンのスタート前にユーザーから情報を得るために調査することである。

 その調査方法には大きく2つの種類があって、一つはユーザー個人の意見や行動傾向などを定性的に分析する手法。例えばインタビューなどを通して、商品に対する「イメージ」や購入を決断する「理由」「感想」など、数値化できない「個人の感性」を調べる“定性調査”と呼ばれるものだ。

 もう一つは、定性調査の対になる調査手法で、複数のユーザーから意見を集め、平均値を集計することで、大まかな傾向を定量的に分析する手法。アンケート形式で回答の傾向を数値化したりする“定量調査”というものである。

 情報収集の手法は色々あるのだが、メインとなるものはアンケート、訪問調査、電話調査、ソーシャルリスニング、グループインタビュー、モニター調査などがある。ネット上でアンケート回答の協力を仰いだり、調査員が電話や自宅訪問をして直接ヒアリングしたり、SNSを見てトレンドを調べたり、販売予定の商品のモニターを集って体験談をフィードバックしてもらったりして、市場のニーズを調査するのだ。

 もっと具体的に言うと、例えば新商品のパッケージの色は赤と青どちらがいいのか、商品名はAとBどちらがいいのか、どの年代の人にその商品の需要がありそうか、テレビCMで好印象なタレントは誰かなど、商品の発売前などにユーザーの声を集めて販売戦略を練るための材料にするのである。キャンペーンがスタートする前にこうした調査をすることによって、クライアントにとってはリスクを軽減した販売戦略を立てられるとして、大手広告代理店は軒並みマーケティングリサーチを提案するのである。

 市場性を見て、販売戦略のリスクを軽減できそうなマーケティングリサーチ。一見、「なぜ否定するの?」と思われる読者もいるだろう。続いて、このマーケティングリサーチのデメリットも詳しくお伝えしよう。