レンツィ伊首相は新たな制裁を阻止

 さらに、ロシアを取り巻く外部環境にも改善の兆しが見え始めている。

 10月20日と21日にブリュッセルで開かれたEU(欧州連合)首脳会議を前に、欧米メディアが、シリアを巡ってEUによる対ロシアの追加制裁が発表される可能性を相次いで報じた。

 これには、ロシア側の緊張感も高まった。これまでロシア側は「制裁の影響はない」と主張し続け、「武士は食わねど高楊枝」的な態度を見せていたが、その内実は制裁による経済への負の影響が広がっていたからだ。

 具体的には、国際金融市場での資金調達が困難になったことなどが挙げられるが、海外からの技術移転にも支障が出始めており、ロシアの産業発展に長期的な影響が出かねないとの懸念が浮上していた。

 そうした状況下、10月19日にウクライナ問題を巡ってドイツ、フランス、ロシア、ウクライナの各首脳によるノルマンディー・フォーマット(ウクライナ情勢をめぐる4カ国の首脳会談で、最初の会談がフランスのノルマンディー地方で行われたため、この名称となった)での会談がベルリンで一年ぶりに開催された。

 現行の制裁と関連付けられている「ミンスク合意」の各事項の履行状況について話し合われた後、メルケル独首相、オランド仏大統領、プーチン・ロシア大統領の間ではシリアについての議論も交わされた。そしてその翌日、ブリュッセルでのEU首脳会議で、ロシア関連の議論が交わされた。

 10月21日付の英フィナンシャル・タイムズ(FT)によれば、シリア問題をめぐりロシアに追加制裁を科そうとしたのはドイツ、フランスと、EU離脱を選択した英国であった。しかし、イタリア、スペイン、オーストリア、ギリシャ、そしてキプロスは新たな制裁に反対し、特にレンツィ伊首相の強い反対により、草案に盛り込まれていた制裁は声明では発表されなかったという。

 FTによれば、レンツィ首相は、対露制裁はシリア問題の解決に役に立たないと主張したと言う。今回ロシアへの新たな制裁が回避されたことや、EU内のスタンスが分かれていることを考えれば、来年1月31日まで有効である現行の制裁が一気に解除されないとしても、徐々に緩和されていく可能性が出てきたといえる。

 完全な経済回復と安定した経済成長にはまだ時間がかかりそうであり、道のりも依然として平坦ではないが、外部ショックによる危機的な状況を打破し新しい環境に適応し始めたのは間違いなさそうだ。

 ロシア経済は1998年の通貨危機や2008年のリーマンショックに比べ、かなり打たれ強くなったと言えるであろう。