ここまで理解できたとして、次は、新アプローチの中身だ。これがインフラ輸出戦略に沿ったものであるとしても、日本政府がこのアプローチをあくまでも領土問題解決に向けて利用したとする。人口2万人弱の北方四島の開発関連のみが対象なのであれば、果たして日本全体に経済的な利益をもたらし、景気対策になりうるのだろうかという疑問が残る。

日本の景気浮揚につながる

 この疑問に対する答えの一端を、今年9月のウラジオストクでの会談で垣間見ることができた。

 9月、ウラジオストクで開催された今年で2回目となる東方経済フォーラムにおいて再度日露首脳会談が実現した。同フォーラム(9月2~3日)では、9月2日に行われた安倍総理とプーチン大統領の首脳会談、続いて3日に行われた安倍総理の基調講演が大きな注目を集めた。

 9月2日の首脳会談では平和条約に関して率直な議論があったと見られるほか、プーチン大統領の訪日が確認されるとともに、12月15日に山口県長門市で首脳会談を行うことでも合意された。加えて、平和条約締結に向けての動きが加速していることを反映する形で、12月の首脳会談を前に、11月にペルーで開かれるAPEC会議でも首脳会談を実現することで合意したことも発表された。

 実際、1回目の東方フォーラムは「中国重視」の色が濃かったが、今回は日本側の参加者の顔ぶれ(政府関係機関だけでなく日本を代表する事業会社や金融機関のトップなども参加)と参加人数から見て、「日本重視」であったのは明らかである。

 同フォーラムでは具体的な大型案件についての正式な発表こそなかった。だが、日本政府は同フォーラムの前日である9月1日にロシア経済協力相を新設(世耕経済相が兼任)するほどロシアとの経済協力拡大への「本気度」を示した。

 ロシア側もこうした動きに呼応する形で領土問題解決に前向きな姿勢を示し始めている。プーチン大統領はブルームバーグとのインタビューにおいて、平和条約の締結を重要課題と位置づけ、今後日本側との妥協案を模索しながら解決に向けて努力していくという、これまでに見られなかったスタンスだ。

 フォーラムでは首脳会談と同じ時間帯に日露経済会議が開かれ、両国の経済関係の拡大について議論が交わされ、具体策についても話し合われた模様であり、12月のプーチン大統領の来日の際には大型案件が発表されると示唆されている。

 日露間の会話が政府レベルで活発化していることから、大型投資案件については水面下で交渉が行われていることが窺われる一方、詳細についての公式な発表はまだない。一方、先日は日本のメディアが、シベリア鉄道を北海道まで延伸させ北海道とサハリンを鉄道で繋ぐという、ロシア側が提案したと言われることに対する日本側が検討中とされる案件についての「リーク」情報を報じた。

 加えて、開通から100年余り経過しているシベリア鉄道の一部である、極東のウラジオストクとロシア連邦に属するタタールスタン共和国の首都カザンを結ぶ線(800km)を高速化する提案も存在すると報じられた。仮にこのような交渉が一定の成果を挙げるならば、日本の建設業界や高速車両メーカー、信号システムなど運営関連のIT(情報技術)事業を担う日本のメーカーには大きなビジネスチャンスが訪れるといっても過言ではない。

 興味深いのは、日本の報道を受けたタス通信をはじめとするロシアのメディアが、シベリア鉄道の延伸・現代化のプロジェクトについて一斉に報道し、日露関係の行方についての高い関心を裏付けたことである。