実は好転していたイタリアの不良債権問題

 イタリアの銀行の多くは、リーマンショック時に(デリバティブなど)大きな打撃が避けられたがゆえに、痛みを伴う銀行改革が遅れているといわれている。

 マイナス金利が収益を圧迫するなか、長年の課題である業界再編の必要性が改めて高まっている。レンツィ首相が実施した銀行改革は、着手の時期が遅すぎ、効果も少ないとの批判にさらされていた。イタリア全国で銀行支店は3万を超えており、支店の半減と15万人に上る従業員削減が急務だ。欧州債務危機も重なり、実質所得や生産性が低下し失業率が高止まりするなど、イタリアでは(保守的な定義によりもともと比率の高かった)不良債権の増加に歯止めがかからなかった。

 ただし、ストレステストで資本不足を指摘された大手銀行モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ銀行(モンテ・パスキ)を除けば、イタリア銀行の不良債権比率は低下傾向にあり、セクター全体の安定性は今回のストレステストでも証明されている。2016年4月のイタリア中銀の発表によれば、2015年12月末では与信の内、新規(フローを年率換算)の不良債権比率は3.3%まで低下し(2014年12月末は5.4%)、破綻債権比率 も2.6%(同2.7%)に留まるなど低下基調にあった。

 不良債権残高も2015年9月でピーク(3,630億ユーロ)となり、徐々に減少していたことは重要な事実として認識すべきであろう。銀行の貸出基準は未だ慎重であるものの、債務不履行となる与信は継続して減少している。さらに、不良債権に対する保全率 (カバー率)は2015年12月時点で45.4%と主要欧州銀行の平均(同43.8%)にほぼ沿った数値となっていたことも留意すべき事項である。

 無論、バランスシート調整(不良債権問題)の遅れなどを理由にイタリア経済は依然として後退リスクにさらされていることは確かである。Brexit以降の欧州景気の下振れ懸念と、一段の金利低下からイタリア銀行セクターの脆弱性が注目され、イタリアへの投資を回避する傾向があったことは否めない。ただ、イタリアの銀行の新規不良債権比率は低下しており、本来であればモンテ・パスキ問題により市場がここまで疑心暗鬼になることはなかったのではないだろうか。

イタリア銀行の新規(フローを年率換算)の不良債権比率と破綻債権比率
(出所)イタリア中銀より大和総研作成