国民投票の結果次第でBrexitに続く可能性

 レンツィ氏は2014年にイタリア史上最年少(当時39歳)の若さで首相となり、改革の旗手として期待されていたことは確かだ。

 ただし、満を持していたはずの12月の国民投票は、今のところ明らかに劣勢だ。国民投票は、上院の定数削減と下院の権限強化による両院制からの脱却を目指す上院改革案の賛否を問う。政治家自らが身を削る改革にもかかわらず、投票実施が公表された2016年1月から、レンツィ首相率いる民主党の支持率はじりじりと低下、憲法改正支持も低下している。

 レンツィ首相は国民投票を自身の信任投票と位置付け、改正反対が過半数となった場合は、即辞任することを明言していた 。2016年9月現在の投票意志を問う世論調査では、分からない(44.7%)が最も多いものの、反対(28.4%)が支持(26.9%)を既に逆転している。レンツィ首相にとって予断を許さない状況が続いている。

 世論調査の劣勢を受けて、最近ではレンツィ首相の弱気な発言が目立つようになった。あるテレビ番組では、「国民投票を自身の進退をかける個人的な性格のものにすることは誤りであった」と発言し、物議を醸した。この発言を受けて、与野党ともにレンツィ首相への反発を強めており、与党民主党議員からも、国民投票が否決された場合には、6月の国民投票で敗北し、引責辞任した英キャメロン首相を見習うべき、との声も高まっている。

 結果は蓋を開けてみなければ分からないが、ここではレンツィ首相が辞任した場合のシナリオを考えてみよう。大きく(1)暫定内閣を樹立、(2)解散総選挙のいずれかに発展すると見られている 。

 (1)のケースでは、マッタレラ大統領が暫定首相を任命することとなり、後任はグラッソ元大統領、パドアン財務相、フランチェスキーニ民主党元党首などが候補として挙げられている。大荒れとなることが予想される金融市場を抑え込むためにも、迅速な(大統領による)暫定首相の任命が求められると同時に、2018年春に予定されている総選挙まで持ちこたえられる内閣を樹立する必要がある。

 より警戒すべきは(2)のシナリオだ。イタリアでは解散権は首相になく、大統領にある。大統領は現行首相の辞任を承認後、暫定首相を任命するが、第1党から選ぶ必要はなく政権運営能力で選ばれる(2011年にベルルスコーニ首相が辞任後、下院議員ではなかったモンティ首相が組閣した例などもある)。暫定首相に指名されても信任決議を受けられず組閣できなければ、大統領が解散総選挙を宣言する。有力な後継候補がいないこともあり、既に与党民主党の支持率は反EUを掲げる政党「五つ星運動」の支持率と拮抗する水準にまで低下している。2016年7月から9月までの世論調査では僅かながらではあるが逆転を許している。

 6月の統一地方首長選でローマやトリノなど主要都市を含む20都市中19都市で5つ星運動が圧勝しており、解散総選挙になれば五つ星運動が第1党になる可能性もあり、英国に続くEU離脱シナリオが現実味を帯びてくる。

 ただ、新興政党である五つ星運動は、政治手腕も未熟であり、地方議会の運営に手間取っていることも確かだ。初の女性ローマ市長として鳴り物入りで就任したビルジニア・ラッジ氏の苦境が連日報道されており、夏季休暇前の反レンツィの勢いが失われ、急速に五つ星運動を見限る動きが加速する可能性も否定できない。

イタリアの国民投票の世論調査と政党支持率
(出所)イタリア政府ウェブサイトより大和総研作成