16年12月のプーチン大統領の訪日以降は日露関係、とりわけ領土問題解決と平和条約締結に向けての外交に大きな進展が見られていなかった。すでに恒例となった安倍首相のロシア東方経済フォーラムへの参加にも大きな期待はなかった。このように後退も前進もしない停滞気味の状態がしばらく続くと思いきや、プーチン大統領の「平和条約を先に……」というサプライズ発言は、領土問題解決に双方を近づけたとは思えないまでも、膠着した状況に目を向かせ、日露関係のこれからについてもう一度考えさせてくれたのは間違いなさそうである。

 アジア太平洋地域の地政学的な状況は20世紀後半と比べて、着実にかつ大幅に変化している。米中間の経済関係は貿易戦争が勃発するほど悪化しているが、そうした中で現役の米国大統領が北朝鮮のトップと首脳会談を行うことなどは以前では考えられなかったであろう。

 では、日露関係はどうかと言うと、安倍首相がロシア側に対する新アプローチを提案した16年以降、日露貿易に弾みがついた。ただ肝心の領土問題解決と平和条約締結は依然として進展がない。

ウラジオストクで開催された東方経済フォーラムで、ロシアのプーチン大統領が日露の平和条約に言及した(写真=代表撮影/AP/アフロ)

 9月にウラジオストクで開かれた東方経済フォーラムでプーチン大統領は、日露貿易総額は17年に前年比14%増加し、18年上半期には同20%伸びたと述べた。日露間で、極東地域を中心に三桁に上るプロジェクトが進められている実績もある。今年で4回目となる当該フォーラムには、プーチン大統領と安倍首相のほか、中国の習近平国家主席、モンゴルや韓国の首脳が参加するなど、年々、注目度が高まっている。

 当該フォーラムの開催に先立ち、9月10日には安倍首相とプーチン大統領による首脳会談が実施された。同会談のアジェンダは、日露経済関係から北朝鮮問題に至るまで幅広い議論に及んだ。また日露平和条約についても議論されたが、その時点では領土問題解決および平和条約締結に向けて進捗があったのか判断可能な材料が少なく、メディアの注目度も低かった。

 日露関係が世界の新聞紙面の一面を飾ったのは、12日の東方経済フォーラムの山場となった全体会合の後の出来事であった。代表国の首脳が参加する大きな会場とテレビカメラを相手にプーチン大統領は、「……私たちは70年間交渉してきました。シンゾウ(安倍首相)はアプローチを変えようと提案しました。そこで私はひらめきました。今ではなくても年末までに、前提条件なしで平和条約を締結するという案を。そして、その平和条約に基づき、友人として、私たちは引き続き論争の的となっている問題を解決します。これ(平和条約締結)によりすべての問題をより容易に解決できるようになります」と発言した。