ただし、法務省は事実上、成人の重国籍を容認するケースもあるようだ。ペルーのフジモリ元大統領のケースでは、日本国籍とペルー国籍の二重国籍であることが公になった後でも、日本国籍放棄を強く求めることはなく、強制的に剥奪することもなかった。同氏が、汚職問題で日本に事実上亡命した際には、日本国籍保有者であるとしてペルー政府の引き渡し要求を拒否までしている。

 現在、成人の二重国籍保有を認めていない国はG7の中では日本のみである(G20まで拡大しても、日本は少数派に属する)。同様に二重国籍を認めていなかったお隣の韓国でも2010年に国籍法が一部改正され、対象範囲を限定した上で韓国籍取得者の外国籍放棄義務が緩和された。

 外国人でも、韓国に対し特別の功労があったり国益に寄与すると認められたりした場合には二重国籍が認められている。このような中、日本でも二重国籍を認めるべきではないかという声が聞かれるようになってきた。

 二重国籍の議論を無視できなくなりつつある背景には、日本への移民流入数が相当数にのぼっていることも挙げられる。経済協力開発機構(OECD)の外国人移住者データを見ると、2016年の移民流入数のトップはドイツの172.0万人、2位の米国118.3万人、3位の英国45.4万人に次ぎ、日本は4位で42.7万人に及んでいる(日本への移住者の定義は、有効なビザを保有しかつ90日以上滞在する外国人)。

 長く移民受け入れ策を議論してこなかった日本だが、実際のところは急速に進む高齢化による労働力不足を背景に、途上国からの留学生を含めた外国人労働者が欠かせない存在となっている。2016年のEU離脱の是非を問う国民投票以降、英国では既にEUからの移民流入数の減少が始まっているため日本が英国を抜き3位になるのは時間の問題といわれている。

 これら外国人労働力を一時的に国内に留めるだけでなく、優秀な人材確保のためにも、二重国籍の容認について真剣に検討する時期が近く来ることも予想できる。ここで、永住権で十分なのではという議論もあるかもしれないが、簡単に失効してしまう永住権と国籍ではその取得の意味に雲泥の差があるといわれている。

 また筆者と同様に90年代後半に大学を卒業した就職氷河期世代の人材の中には、優秀であったものの日本で就職が叶わず海外に活躍の場を求めたケースも多い。彼らやその子息を日本の労働力として活用し日本社会への貢献を促すためにも、二重国籍許容については真剣に考える必要があるだろう。

 彼らが移住した国で永住権を取得した場合でも、1~3年その国を離れる、あるいはその国での生活実態がないと判断されると、永住権を剥奪されるケースが多く、日本に数年里帰りして就労するというような選択肢は難しいのが実情だ。

こっそり二重国籍は黙認も

 無論、政治家や公務員などの要職者については、特別措置を取るなど慎重な配慮が求められるだろう(参政権に関しても同様)。日本でも一部政治家の二重国籍が問題となったが、重国籍議員が認められている英国ですらEU離脱についての国民投票の際には、EU国籍を保有する議員の動向が注目された上、他国籍配偶者を持つ議員への批判が高まったこともあった。

 また、政治家や公務員だけでなく、前述のジェルダン・シャキリのケースなど、その国の代表とは関係ない政治的な言動に対しても罰則規定を設けるべきであろう。

 実際に成人した後もこっそり外国籍を保持しつつ、日本のパスポートも保持している者も相当数にのぼるといわれている。本来であれば外国籍取得後2年以内に放棄する必要がある日本国籍であるが、特に罰則規定もなく事実上黙認されている面もあるようだ。

 こういう曖昧さを今後も放置しているのであれば、政府はそろそろ真剣な議論を行う時期に来ているのではないだろうか。