現在、米国の法案は下院の国際関係委員会で審議されている模様であり、上院を通過した修正条項がさらに修正される可能性が高まってきた。修正の方向性として考えられるのは、シリアや北朝鮮の問題に関しロシアの協力を取り付けるうえで制裁を取引材料として活用できるよう、制裁を緩和する、または解除する権限を大統領に残すことであろう。

そして影響は日本にも

 しかし、法案がこのまま修正されずに成立した場合、悪影響はロシアのみならず、欧州諸国や日本にも及ぶ可能性が高い。ロシア産の天然ガス輸出関連の修正条項が米議会を通過すれば、「ノルドストリーム2」をはじめパイプラン建設に影響が及び、欧州へのガス供給に支障が生じる恐れがある。

 米国産の液化ガスが今後も徐々に欧州に輸出されていく可能性があるが、パイプランで輸送されるロシア産ガスの輸出価格と比べると米国産ガスの輸出価格は40%以上高いため、欧州が政治的な理由でロシア産天然ガスへの依存度の引き下げを試み米国産の液化ガスに切り替えることにでもなれば、欧州のエネルギー価格が高騰し、欧州の景気回復を遅らせることになるだろう。

 ただ、ガスプロムにとり「幸運」とも言えるのは、欧州のエネルギー市場が成熟しており、長年をかけて構築された総合的なロシアと欧州の関係が価格競争を別にしても簡単に崩れることがなさそうなことを、共同声明は示唆している。

 しかし、日本は欧州のことばかりを心配してはいられない。

 法案では既存の制裁に深海、北極圏およびシェール層開発関連のエネルギー案件も追加された。日本が融資しているロシアの北極圏にあるヤマル半島の液化ガス案件も今後制裁対象となるならば、日本のエネルギー戦略に支障を来たす可能性も否定できない。

 対ロシア制裁が主眼であったはずの米国の戦略はいつの間にか米国のエネルギー戦略に化けてしまい、間接的には欧州と日本に対する制裁となりかねない。