共同声明で問題としているのは、ロシアから天然ガスを欧州に送るためのパイプライン「ノルドストリーム2」の建設に関わっている両国の大手エネルギー会社などが制裁の対象になる可能性が高い点だ。

猛反発するドイツとオーストリア

 欧州のエネルギー大手は現在、ロシア=ドイツ間の天然ガスパイプライン(ノルドストリーム2)に融資しており、技術面でも大規模な支援を展開している。仮に米国の新法案が成立し、ロシアのガスパイプライン案件に100万ドル以上、あるいは一年間に500万ドル以上の投資を行った者(企業)が制裁対象となれば、欧州企業の米国子会社などが罰せられることになる。

 ドイツにとってロシアは最も重要なエネルギー供給国である。ドイツのガス輸入の38%、石油輸入の35%、石炭輸入の25%、つまりドイツのエネルギー需要全体の四分の一がロシアからの輸入で賄われている。オーストリアも天然ガス需要の80%をロシアからの輸入で賄っており、ノルウェーからも一部輸入している(2012年は14%)ものの、大部分をロシアのガスプロムから購入している。

 ドイツやオーストリア以外の欧州諸国にとっても、エネルギー供給でロシアに依存しており、米国が課そうとしているロシアのガスパイプラインに対する制裁は大きな問題だ。

 ロシアのガスプロムは欧州の天然ガス需要の30%を賄っている。ガスプロムは2016年に天然ガス1783億立方メートルを欧州向けに輸出しており、輸出規模は過去最高となった。個別の国の数字を見ると、同社は同年、ドイツに天然ガス500億立方メートル(欧州向け輸出全体に占める割合は28%で最大)、2位と3位のトルコおよびイタリアには各250億立法メートルを輸出している。EU28か国全体では、輸入天然ガスの約40%はロシア産であり、石油輸入についてはロシア産が約30%を占めている。

 こうした背景から、共同声明では「欧州のエネルギー供給網の拡大に取り組んでいる欧州企業に対し、国外から違法な制裁措置が科されるなどという脅威を受け入れることはできない」とした上で、「欧州のエネルギー供給網は欧州の問題であり、アメリカの問題ではない」と断じている。

 欧州ではロシアに対するエネルギー依存度が高くなりすぎることへの警戒が一方であるものの、他方で米国の制裁によって欧州のエネルギー政策が大きな制約を受けることも望ましくないと考えられている。

 米国が経済制裁という手段を使って、欧州市場からロシアの天然ガスを締め出す一方、米国の液化ガスを売り込もうとしているのではないかとの懸念を非常にストレートに表明している。

 確かに、共同声明にある、「政治的制裁は決して経済的利益に結びついてはならない」という主張は正論である。「アメリカファースト」も行き過ぎるとこのように同盟国をも憤慨させることになる。