米国のロシアへの経済制裁は、欧州のエネルギー供給体制にも影響を与える可能性が大きい。写真はロシアのエネルギー大手ガスプロムの施設を視察するプーチン大統領(写真:Anadolu Agency/Getty Images)

 現地時間の6月15日、米上院において対ロシア制裁の拡大・強化を修正条項「ロシア連邦に対する制裁およびその他の措置」(以下「法案」)として盛り込んだ対イラン制裁法が採決にかけられた。結果は賛成98、反対2となり、民主、共和という党派を超えた多数の議員の賛成で可決された。

 「イランの不安定化活動阻止対策法2017年」と称する法案の前半には、中東および北アフリカにとり脅威とみなされるイランの活動に対する対策、イランの弾道ミサイルプログラム関連の追加制裁等が盛り込まれている。

 しかし、注目すべきは、同法の後半部分だろう。そこには、対ロシア経済制裁の修正条項が追加され、経済制裁を含む幅広い対ロ制裁が列記されている。

 対ロシア制裁に関する修正条項は4つの部分からなる。第一は現在の対ロシア制裁を拡大し強化すること。第二は新たな制裁を導入すること。第三は対ロ制裁の緩和または解除について大統領が独断で実行できないような仕組みを整えること。そして第四は、ロシア向け資本提供・融資などに対する取り締まりを厳格化し、ロシアへの不正資金流出を含む不法金融取引の追跡を行う財務省の監視能力を強化することである。

 法案は今後下院で審議され、大統領の署名を経て成立する運びだが、成立すればロシアの金融機関とエネルギー産業がかなり厳しい立場に追い込まれることは容易に想像できる。

 従来は制裁対象のロシアの金融機関に対し、90日間の融資が可能であったが、この期間が14日間に短縮される。エネルギー会社への融資も同様に90日間から30日間に短縮されるほか、深海、北極圏およびシェール層の石油・ガス開発における技術支援も制裁対象となる。

 鉱業や金属産業、鉄道・船舶業にも制裁が拡大されるほか、ロシア産天然ガスの輸出手段であるパイプライン建設も新たな制裁分野に加わる。さらには、ロシア国債の購入が制裁対象となる可能性も指摘されている。

 ロシアにとっては、相当に厳しい制裁だが、その導入の背景には何があったのだろうか。法案の作成に携わった議員によれば、ウクライナ東部の紛争、シリアのアサド政権の維持に拘るロシア政府のスタンス、そして2016年の米大統領選挙の際にロシアがサイバー攻撃を仕掛けた疑いが強いことが理由とのことである。

 ただ、その裏には米国議会の「本音」も潜んでいると筆者は見ている。