北朝鮮の非核化に具体的な道筋が必要

 そして、6月8~9日。モスクワでの核問題に関する米露の対話会議が実施されたことは、ロシアが朝鮮半島問題の解決に深く関わっていることを反映している。ロシアの専門家は米国の専門家と同様に、問題解決の道を模索しているのだ。

 「一気」に非核化が実現しないことについては、米朝首脳会談関連の報道を振り返れば、米国側も認めていると判断してもよさそうである。問題なのは、北朝鮮がどういった段階を踏んで非核化を実現するかについて明確な道筋が未だに描かれていないことである。

 北朝鮮問題に詳しいロシアの元外交官のゲオルギー・トロラヤ氏は、2~3年をかけて完全な、あるいは部分的な非核化を段階的に達成することを提案している。具体的には以下の通りである。

  • 核実験の終了
  • 核実験場の破壊
  • 新しい核兵器の生産停止
  • 核分裂性物質の生産の停止
  • 軍事用原子力施設の解体
  • 核分裂性物質の数量の削減
  • 核弾頭の保有数の削減
  • 核兵器の完全な破壊

 しかしトロラヤ氏は、米国にもこのようなはっきりしたプランが必要であると主張している。イラン核合意に見るように、米国は政権が変われば「気が変わる」という、相手側からすれば大きな政治的なリスクを抱える。

 ポンペオ米国務長官は先日、米国政府は2020年を目処に北朝鮮の非核化を目指すと述べた。2020年と言えば、米国は次期大統領選の年に当たるが、それまでに北朝鮮の完全な非核化に成功するという保証はない。

 そこで米国の政権が変わっても合意の条件は変わらない、あるいは、米国がイランとの核合意と同様に放棄しないという保証がないことが、北朝鮮を本気にさせる上でのハードルになるとロシアは見ている。

 そのためトロラヤ氏は、お互いの意思を確かめながら解決への確かな道を見出すには、今後、首脳会談を含め多くの国際会議が必要となるほか、中国とロシアを含む他国による保証制度を確立させる必要があると主張している。また、ここで失敗すれば北朝鮮は核兵器を廃棄するどころか強化し、永遠に核保有国として存在する根拠を手に入れるリスクが見え隠れしていると、警鐘を鳴らしている。

 世界中が注視した米朝首脳会談は朝鮮半島の非核化への大きな一歩になるとの期待が高まる中、非核化のロードマップやその過程において6カ国会議のメンバーであるロシア、中国と日本の今後の役割が注目されている。

 外交はスポーツと違って、勝者と敗者ではなく引き分けを目指している分野があるため、朝鮮半島の真の平和と繁栄に向けて、すべての関係国によるこうした努力が結実することを願ってやまない。