BREXITが起こったときの金融面の影響は…

 もし離脱が決定したとき、影響が直ぐに表れるのは、通貨ポンド、英国債(ギルト債)などの金融市場といわれている。英国の貿易収支は赤字が続き、特に過去3年間はその赤字幅が拡大している。

 英国債の国外投資家比率は過去10年一貫して25%を上回っており、英国のEU離脱(BREXIT)が決定した直後から国外投資家の資本逃避が一斉に起こる可能性も否定できない。それに加えて、今の英国では、さらなる経常赤字幅の拡大を止めることは難しく、年初来から大きく下げた通貨ポンドがさらに下落することが予想される。現段階では、いまだ大規模な資本逃避は確認されていないが、今後起こりうる影響を懸念して、新規投資を手控える動きから、足元、通貨ポンドは不安定な展開となっている。

図表2 英国債の国外保有状況と経常収支と対GDP比推移
(出所)英国債務管理庁(DMO)、ONSより大和総研作成

 世界的な金融ハブ、シティを抱える英国の金融街としての側面における影響も必至だ。特に英国に拠点を置く日系金融機関は、今後、欧州拠点の中心を英国に置くことへの再考が求められる。現在は、英国に拠点を置き英国当局から認可を受けた金融機関は、英国以外のEU加盟国でも別途認可を必要とせずに、金融サービス業務を行うことが可能である(いわゆるEUパスポート制)。

 銀行業務は自己資本規制指令IV(CRD IV)、投資サービスはEU金融商品市場指令(MiFID)など、提供される金融サービスの違いにより各パスポートがありEU域内へのアクセスが可能となっている。

 邦銀等のEU域外国、すなわち第三国の金融機関は、ロンドンの金融街シティに拠点を構えこのEUパスポートを利用して、EU市場へのアクセスを享受していた。ただBREXITが実現した場合、英国は第三国となりEUパスポートが失われるため、EU加盟国内での金融サービス業務継続には何かしらの措置が求められる。唯一の例外として、英国がEEA(欧州経済領域*1)に加盟し直した場合は、そのままEUパスポートが維持され、EU域内での金融サービス業務が可能となる。

 ただし、2018年1月にMiFIDはMiFIDⅡに置き換えられることが予定されており、BREXITは最短でも2018年央となるため(リスボン条約50条により2年以内の脱退協定の締結が求められるため)、英国はたとえEUを離脱する場合でも、わざわざMiFIDⅡを国内法に移管する必要がある。

図表3 BREXIT後、英国に支店がある邦銀がEUの金融サービスへアクセスするには
(※注1)サービス提供先となるEU加盟国で、リテール顧客に対する業務認可の条件に支店設立を含める条文
(※注2)各国により、子会社を設立すればアクセスが可能となるケースもある
(出所)欧州委員会、Ashurstより大和総研作成

 一例を挙げると、BREXIT後、日本をはじめとする第三国や英国の銀行が、EU域内に支店を設立せずに、(EU域内の)機関投資家(プロ顧客)と取引するためには、欧州証券市場監督機構(ESMA)への登録が必要となる。この登録の条件は、当該の第三国の投資サービス規制の枠組みがEU相当として認められること(同等性評価*2 )であり、最終的に欧州委員会の承認が必要である。

 無論、日本や英国等の先進国の金融サービス規制のフレームワークが同等と認められないということは理論的に想定しづらい。それでもEU離脱後の英国に対して政治的な妨害が加わり、承認申請プロセスに相当の時間がかかる可能性は懸念材料となる。特にシティに拠点を置く第三国金融機関の取引の中心はユーロ域内の国債や社債であるため、欧州中央銀行(ECB)がこれを域内の監視下に置きたいという本音も見え隠れしている*3

 さらに、CRD IV範囲の融資や預金預かり業務など伝統的銀行業務に関しては、(MiFIDⅡが導入されて以降)CRD IVでの同等性評価がどのように変更されるか、その詳細は明らかになっていない(MiFIDのEUパスポートと同様にCRD IVのEUパスポートも、BREXIT後に失効することだけは決定している)。日本を含む英国以外の銀行に至っては、英国からどの様にEU市場にアクセスするかのフロー詳細に関しては白紙状態となっている。

 具体的な取り決めが決まるまで同程度の時間がかかることは間違いなく、すなわち、英国に拠点を構える邦銀は(リスクシナリオとして)EU域内に別支店を設置せざるを得ない状況も想定されている。