慢性的な需要不足は変わらず

 欧州銀行は、マイナス金利により貸出金利回りを高めることができず、金利上昇リスクに怯えながら、利益を高める方法を模索している。ECB(欧州中央銀行)はユーロ危機以降、これまでの常識を覆すような金融政策を導入してきたが、慢性的な需要不足による低インフレの状況には変化の兆しが見えてこない。

 欧州では、マイナス金利導入の意図である消費活性化や欧州銀行の企業貸出の増加が顕著に起きていないことは重要な事実として認識すべきであろう。欧州銀行は不良債権の蓄積が未だ多く、成長資金が必要な企業にも貸出やリスクマネーの供給が滞るケースが多い。利子だけを返済するゾンビ企業も依然として多く、銀行収益の悪化により、欧州債務危機の後遺症から抜け出していない状態が続いている。

 この状況を考えると、今後もユーロ圏の経済回復は停滞する可能性が高く、永続的な量的緩和やマイナス金利という未知の領域により、予想外のネガティブな結果に直面する恐れがある。英国FSA前長官のアデア・ターナー卿は、近著でデフレからの脱却に向け、家計への商品券の無償配布や、政府が無利子永久債を発行して中銀が直接引受けるなどのヘリコプターマネーの有用性を主張している。

 ハイパーインフレや、期限付きの商品券をばら撒いた後の反動でさらなる需要停滞などの副作用はあるものの、金融政策のオプションとしてヘリコプターマネー等を検討する価値は高い。バーゼルⅢの生みの親であるターナー氏の発言は英国のみならず、欧州銀行関係者に大きな影響力を持つ。

 ただし、2016年度に入り欧州銀行は危機後の規制強化一辺倒のムードから脱しつつあることは明るい材料である。株式投資への税制緩和などを盛り込む資本市場同盟の実現促進などもその一環であり、欧州金融当局からのさらなる締め付けも収束しつつある。大規模なリストラが終了しつつある欧州銀行が、どの様な事業選択を行い、低収益モデルを打開していくのかその動向に注目したい。

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