今も続く財務リストラ

 コストの高止まりに加えて、財務リストラを未だに継続している点も欧州銀行の収益が思うように上がらない理由だ。

 ギリシャに端を発した2010年のユーロ危機により金融安定化に時間が掛かっている欧州では、大規模なリストラが昨年あたりからようやく本格化し始め、未だにノンコア資産の売却が続いている。それに加えて、欧州銀行はバーゼルⅢなどの規制強化の波に資本増強やリスクアセットの圧縮で何とか対応してきたが、破綻を恐れる規制当局による資本要件は厳格化の一途を辿っている。

 大手国際金融機関への新資本規制「TLAC」等においても、次世代の規制強化に伴う調達コストを顧客に転嫁することには既に限界が来ており、さらなるリストラが求められていることは想像に難くない。

 一方、米銀はリーマンショックの直撃を受けたものの、早期に痛みを伴う人員リストラ、業務整理を断行したことが功を奏したといえよう。国別のROE(自己資本利益率)をみても(図表2)、米銀はリーマンショック後、大きくその水準を低下させたものの、債務危機以降に欧州銀行の水準を上回り、欧州でのマイナス金利導入以降さらに差が広がっていることがわかる。

 欧州銀行は、資金利ザヤの低下はもとより、米銀や邦銀と比較して流動性預金が少なく、貸出資金の調達はCPやインターバンク、レポといったホールセール調達が多い。預金流出を嫌いリテール預金からの利子徴収が出来ず、マイナス金利のコストを顧客に転嫁できずにいる状態が欧州銀行の経営体力をむしばんでいる。

図表2 欧州・米国・英国の銀行のROE推移
図表2 欧州・米国・英国の銀行のROE推移
(注)システム上重要な銀行(G-SIBs)を主な対象とし、各国・地域の銀行を加重平均ベースで合計して計測(欧州12行、英国5行、米国8行)
(出所)Bloombergより大和総研作成
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限界が近づく欧州のマイナス金利政策

 欧州ではマイナス金利の副作用が影響し、銀行の収益性を低下させていることも問題視されている。特に長期固定住宅ローンの需要の急増は、一部の欧州銀行経営環境をさらに圧迫させているといわれている。過剰な長期固定住宅ローンは、将来的に利上げ局面になったときに、バランスシートの金利リスクを顕在化させ、銀行収益の大幅な機会損失を招く。銀行もオフバランスが容易でない貸出の金利リスクをヘッジするためのコスト(大量な金利スワップ契約)を掛けざるを得ない。

 特に2011年からゼロ金利、2014年からマイナス金利政策が採用されているスイスでは、長期固定貸出増加を抑制するため、今年に入り(長期固定貸出の)住宅ローン金利をあえて引き上げ始めた。多大なヘッジコストを掛けるよりは、単純に貸出を抑制するために金利引き上げを選択している。

 結果的にスイスでは、政策当局の意図とは逆の副作用が生じている状態を意味する。これ以上マイナス金利幅を拡大させても、貸出利回り低下させ貸出を増加させるという好循環は期待できないことが示唆されている。

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