全体の2割は働かないアリの場合

 それを証明してくれたのが「アリ社会」です。

 最近の研究で、「働き者」というイメージのあるアリも、アリ社会の2割は「働かないアリ」であることがわかっています(詳しくは、長谷川英祐著『働かないアリに意義がある』(KADOKAWA 中経の文庫)をご参照下さい)。

 8割のアリが一生懸命働いて、この2割の「働かないアリ」を食わせているわけで、一見すると非常に非効率のように見えますが、ところがこの「働かないアリ」がいなくなると、アリのコロニーが長続きしないそうです。

 確かに「働かないアリ」がいなくなって100%のアリが働くようになると、短期的には生産効率が高まりますが、中長期的にみたとき生産効率にムラができてしまい、コロニー絶滅の危機に瀕する確率が高くなるといいます。

 なぜか。

 じつはこの「2割の働かないアリ」は、本当にまったく働かないわけではなく、こうしたコロニー全体の生産性が落ち込んだときに働きはじめることでこれを一定に保つ役割を担っていたのです。

 つまり、「2割の働かないアリ」は、まさに人間の体でいえば「脂肪」に当たり、企業でいえば「在庫」、車でいえば「あそび」、国家でいえば「ゆるやかな政治」に当たり、コロニーを守る重要なファクターだったのです。

現代日本社会の“あそび”とは?

 つまり。

 「脂肪」も「在庫」も「あそび」も「ゆるさ」も、すべて程度を超えれば組織の“負担”となりますが、なくなってしまえば組織の寿命を著しく縮め、適度にあれば“ゆとり”となって、組織の寿命を延ばしてくれる役割を担っていたのです。

 “特化”はそれによってNo.1に立つことはできても命を縮め、“ゆとり”こそが寿命を延ばす。

 アメリカが20世紀に覇を唱えることができたのは、20世紀の世界観にその身を“特化”させたがゆえですから、時代が変わった21世紀は、アメリカにとって亡びの世紀となることは間違いありません。

 それに対して日本が2000有余年にわたって国を維持させることができたのは、敢えてどの時代にも“特化”させず、「2割のあそび」を作っておく秘訣を知っていたからです。

 そうしてみると。

 今、日本社会には「ニート」「引きこもり」と呼ばれる者たちがにわかに増え、何かと非難の対象となっていますが、ひょっとしたら彼らこそ新時代の「働かないアリ」であり、「社会の“あそび”の一翼」を担っているのかもしれません。

 そういえば。

 ネット上で一部の中国人は日本人のことを「日本鬼子(リーベングイズ=悪鬼のごとき日本人のクソ野郎)」と呼んで侮蔑・罵倒することがありますが、これを逆手にとって、日本のオタクが「日本鬼子(ひのもとおにこ)」という“萌えキャラ”を作って、中国人の悪意を萎えさせるというイメージ戦略が「2ちゃんねる」から起こったことがありました。こんな戦略は政府や官僚には思い浮かばないでしょうし、またたとえ思いついたところで実行できない策で、勉強しかしてこなかった高学歴よりよっぽど頼りになります。

 これから迎える混迷の時代、日本がどう生き抜いていくのか、注視していきたいと思います。