振り返って、大塚家具の場合

 したがって2年前、「大塚家具のお家騒動」報道を最初に耳にした時点で、筆者の脳裏にはこれらの歴史がよぎり、「2年連続、45億円の赤字!」「過去最悪の63億円赤字!」などの続報を聞くまでもなく、「大塚家具は終わったな」と確信したものでした。

 巷間、こうした経営上の数字を見ては、現社長の経営手腕に疑問符が打たれ、「娘(大塚久美子氏)の経営方針が間違っていた」だの「父(大塚勝久氏)の経営方針に回帰すべきだ!」だのと取り沙汰されていますが、娘の経営方針が正しかろうが誤りだろうが、そんなことはあまり関係なく、「お家騒動」を起こした時点でその組織はすでに“詰んで”いるのです。

 組織というものは、先代から次代に引き継がれる時に動揺が走りやすいもので、袁氏滅亡の際も、父・袁紹が亡くなった時こそ、兄弟はお互い譲りあってでも「結束」を最優先しなければならないのに、すぐさま兄弟が骨肉の争いを始めました。

 これを好機と曹操が袁尚(弟)を攻めると、「外敵」を目の前にしてはさすがに兄弟も結束するかと思いきや、袁譚(兄)は弟を助けるどころか、むしろ外敵(曹操)と協力して彼を追撃しはじめる有様。

 癌を患い抵抗力が落ちている身でありながら、自らせっせと結核菌を吸い込んでいるようなもので、もはや愚かさもここに窮まれり、救いようがありません。

 これを大塚家具に照らし合わせると、経営が傾いたこの時こそ、父娘が手に手を取り合い結束して事に当たらねばならないのに、見るに堪えない骨肉の争い。

 組織というものは、内部が結束・団結し、組織構成員の個々のベクトル(努力の方向性)が一斉に同一方向に向いた時に初めてパワーを発揮するものです。それが、上層部が「右陣営」「左陣営」に分かれてベクトルを打ち消し合い、両陣営に属さない多くの構成員は士気ダダ下がりとなってベクトル自体が消えていくのですから、これではどんな大企業も大国も崩壊を免れることはできません。

曹操も「跡継ぎ問題」に悩んでいた

 ところで魏の基礎を作った曹操も、ご多分に漏れず跡継ぎ問題に頭を抱えていました。

嫡男の曹丕(そうひ)にするか、文才もあり頭もよい曹植(そうしょく)にするか。

 曹操の心情としては、曹植の方がかわいく、曹植を跡継ぎにしたい。
 しかし、曹丕を廃嫡して曹植にするとなれば、跡継ぎ問題が発生することは火を見るより明らか。悩みに悩んだ曹操でしたが、彼はついに自分では決めかね、重臣の賈詡(かく)に相談します。

跡継ぎは、曹丕か曹植か、どちらにしたらよいと思うか?

 賈詡はこの問いに直接的には答えず、上の空のように答えました。
 「今、ちょうど袁紹と劉表のことを考えておりました」

 どちらも大国でありながら嫡男を廃嫡したためにお家騒動を引き起こして亡んでいった家柄です。これを聞いて我に返った曹操は、ただちに嫡男・曹丕を跡継ぎと決め、大きなお家騒動に発展することを避けることができました。

 組織の長たる者、何よりも組織の結束を最優先させる責務があり、そのためなら、時に自分の願望や方針すら曲げることもしなければなりません。曹操はそれができたため国を守ることができましたが、袁紹はそれができず国を亡ぼしました。

歴史に学ぶことの意味

 大塚家具の前社長も、ひとたび娘に代を譲った以上、娘がどんなに自分の経営方針と違うやり方をしたとしても、いっさいの口出しをすべきではありませんでしたし、口出しするくらいなら最初から譲るべきではありませんでした。

 それができなかったところが、前社長が「袁紹」たる所以で、大塚家具が傾いた真因でもあります。すぐれた経営者は、ほとんど例外なく歴史をよく学んでいます。もし前社長が「三國志」を学び、これをよく理解していればこんなことにはならなかったかもしれません。

 歴史に学ぶとはこういうことです。