とにかく天才は、「ふつうの人がふつうにできることが、まったくできない」という症状を発症するのです。

 しかし、天才といえども人間。そして人間は「神」ではありませんから、必ずどこかすぐれたところがあれば、その分どこかで劣った部分を持つのは当然のこと。

 アインシュタインが「異常に暗記が苦手だった」ことはすでに触れましたが、その代わり、洞察力・理解力・達観力はズバ抜けていました。あちらを立てればこちらが立たず。何かの才能が圧倒的であれば、その代わりに何かの才能が欠落しているものです。多くの人は「天才」のズバ抜けた一面だけを見て絶讃しているにすぎません。

生物として必要な能力を完璧に身につけたのが「凡人」

 これをもう少しわかりやすく説明するため、『ドラゴンボール』(主人公の孫悟空と、秘宝・ドラゴンボールを軸に展開する「冒険」「バトル」「友情」などを描いた長編漫画、©鳥山明)に登場するスカウター(戦闘力を数値化した情報などが表示される装置)のように、人間の才能を数値化して考えてみます。

 たとえば、人間が発揮できる才能の種類が100種あったとして、さらにこれに振り分けることができる能力値の総計が「1万ポイント」あると仮定します。「生き残ることだけを至上命令」とするDNAは、どんな状況にも対応できるよう、与えられた合計1万ポイントの能力を100の才能すべてにできるかぎり均等に100ポイントずつ振り分けようとします。

 こうしてDNAの目的が理想的に達成された、生物が生き抜いていく能力を万遍なく身につけた人こそ、世間一般でいうところの「凡人」です。

 しかしDNAも稀にその配分バランスを失敗し、ひとつの才能に異様に偏って1000ポイントも2000ポイントも振り分けてしまうことがあります。そうなると、残りの99の才能に振り分けるポイント数が激減してしまうため、「ふつうの人がふつうにできることが、まったくできない」ということになるわけです。