フランクリンはこうしたことを2~3度繰り返します。すると、何ということでしょう! 政敵の嫌がらせはピタリと止み、それどころか、フランクリンの頼もしい賛同者になったといいます。
一体何が起こったのでしょうか?
じつはこれ、心理学用語で「ベンジャミン・フランクリン効果」と名づけられたもので、人間というものは「(嫌いな人の頼みごとに応じるという、感情と矛盾した行動であっても)ひとたび人に親切にすると、その人に対して抱いていたネガティブな印象が掻き消され、もっと親切にしたくなる心理」が働くそうで、これを応用したものでした。
人を呪わば穴ふたつ、争いは別の新たな憎しみを生む
目の前に「敵」がいるとき、人間どうしても身構えたり、敵意を露わにしたり、攻撃的になったりしがちですが、それは消耗戦の幕開けとなるだけで、仮に敵を倒せたとしてもこちらも満身創痍。それどころか、そうした争いは別の新たな憎しみを生み、新たな敵を生むことにつながります。その結果、たとえ勝ちつづけても、いつかは自分が敗れる番がやってきます。
それを孫子はこういう言葉で結びました。
百戦百勝は善の善なる者に非ざるなり。
(百戦百勝は最善の方策ではない)
そして、老子もこういう言葉を残しています。
よく敵に勝つ者は争わず。
(戦うことの上手な人は、争ったりしない)
自分に敵対する者が現れたとき、大切なことはまず「敵意に敵意で返さない」。むしろ、敵の懐に飛び込むこと。
尾を振る犬は打たれぬ。
(尾を振ってなついてくる犬は、叩かれることはない)
「敵」と敵対するのではなく、これを如何にして味方とするかを考えることが大切だと歴史は教えてくれます。