中立的立場で信望を集めた、ベンジャミン・フランクリン

ベンジャミン・フランクリン (写真:Photoshot/アフロ)
ベンジャミン・フランクリン (写真:Photoshot/アフロ)

 しかしながら、「軍隊」ならそれでよいとして、それが「個人」である場合にはどのように考えればよいでしょうか。そこでナポレオンに代わってつぎに登場願うのが、かのベンジャミン=フランクリン(1706~1790)。

 彼はアメリカ合衆国創成期の政治家であると同時に科学者でもあり、科学者としての功績では、雷雨の時に凧を飛ばして雷が電気であることを発見したことがよく人口に膾炙(じんこうにかいしゃ)している人物です。貧しい家に生まれ、印刷業を営んでいましたが、「貧しいリチャードの暦(格言が書かれた日めくりカレンダー)」を出版して有名となり、政治家へと転身、やがて「建国の父」の一人にまで数えられるようになる人物です。

 しかし、彼の生きた時代は、まさにアメリカ合衆国建国期の激動の時代。当時の政界は、右と左が侃々諤々(かんかんがくがく)の論争を行い、立場・意見の違う政敵同士、お互いに反目し合ったものでしたが、そうした中にあって彼は、中立的立場を維持し、右からも左からも信望を集めた人物でした。

 しかし、そんな彼にも敵愾心を燃やす政敵が現れます。彼はフランクリンを目の仇にし、彼のやることなすこと「反対!」「反対!」「反対!」。

 もはや「初めに反対ありき」、反対すること自体が目的で、その理由などあとから取って付けたものではないかと疑いたくなるほど、執拗な攻撃をフランクリンに仕掛けてきます。しかもその政敵は有力議員であったため、一時はフランクリンの発言が封じ込められる有様になってしまいました。

ベンジャミン・フランクリン効果とは?

 困ったフランクリンは一計を案じます。わざわざ政敵の家を訪ねてこう言ったのでした。

申し訳ありません、今日はひとつお願いの儀がありましてお宅にうかがわせてもらいました。

 いつも嫌がらせの限りを尽くしている相手が、わざわざ自分の家を訪問してきて「お願い」とは? その政敵も身構えてしまいます。

政敵:「な、なにかね?」

じつは私、ある本を読みたくて探しているのですが、なかなか見つからなくて。聞くところによると、あなたはその本を持っていらっしゃると聞き及びました。さしつかえなければ、2~3日、その本をお貸しいただけないでしょうか。

政敵:「な、なんだ、何かと思えばそんなことか。よかろう。キミもこれを読んでしっかり勉強するがよい。」



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