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 よく「日本には地下資源がない」と嘆く表現を見かけますが、筆者は「日本に地下資源がなくて本当によかった」と心から思います。地下資源がないからこそ、それを補うために頭を悩ませて創意工夫し、額に汗して勤勉に働いて富を生み出していかなければ国を維持できません。

 そうした厳しい歴史を歩んできたからこそ、日本人は洗練され、世界に冠たる国のひとつとして繁栄することができたのです。なまじ豊富な地下資源などがあったら、それに頼って怠けることを覚え、諸列強からその富を虎視眈々と狙われ、他のアジア諸国同様、日本も19世紀に植民地とされ、亡びていたことでしょう。

ナウルを反面教師にして

 今回、サウジアラビアの国王が御自らわざわざ出向いてまで日本にやってきたのは、こうしたことへの危機感からです。21世紀に入って以降、急速に石油に頼らない新エネルギーの開発が進んでいます。遠からず石油に頼らなくてもエネルギーがまかなえる時代が到来するでしょう。

 そうなってしまう前に対策を立てておかなければ、サウジもナウルの二の舞となることは火を見るより明らか。そこで今回、石油だけに頼る経済体制から脱却するべく、日本に経済協力を要請するためにやってきたのです。

 じつはこれ、地下資源の乏しい日本も他人事ではありません。今の日本が豊かなのは、先人たちの血の滲むような努力の賜(たまもの)です。

 現状の豊かさを維持するだけでも、若者には一層の智恵と努力が必要になってくるのに、今の若者を見ていると、先人たちが築きあげたこの“過去の遺産”にどっぷり浸かり、これを食いつぶしながらラクをすることばかり考えているように見えます。もしそうであるならば、日本の未来は殆(あや)うい。短期的視点でリン鉱石(グアノ)に依存したナウルと同様に、日本人が「先人の築きあげた富」に依存してしまえば、我が国もナウルのあとを追うことになるでしょう。