やがて第二次世界大戦を経て、1968年にようやく独立を達成すると、それに伴ってリン鉱石採掘による莫大な収入がナウル国民に還元されるようになります。

 その結果、1980年代には国民1人当たりのGNP(国民総生産)は2万ドルにものぼり、それは当時の日本(9,900ドル)の約2倍、アメリカ合衆国(1万3,500ドル)の約1.5倍という世界でもトップレベルの金満国家に生まれ変わりました。

 医療費もタダ、学費もタダ、水道・光熱費はもちろん税金までタダ。

 そのうえ生活費まで支給され、新婚には一軒家まで進呈され、リン鉱石採掘などの労働すらもすべて外国人労働者に任せっきりとなり、国民はまったく働かなくても生きていけるようになります。

 その結果、国民はほぼ公務員(10%)と無職(90%)だけとなり、「毎日が日曜日」という“夢のような時代”が30年ほどつづくことになりました。

 はてさて、これが羨ましいでしょうか?

古代ローマの場合

 ここで多くの人が勘違いする事実があります。それは、「(地下資源など)最初からそこにあるもの」は“ほんとうの富”ではないということです。富でないどころか、それは手を出したが最後、亡びの道へとまっしぐらとなる“禁断の果実”です。

 たとえば──。

 古代ローマは、周辺諸民族を奴隷とし、その土地を奪い、その富を食い尽くしながら領土を広げていき、やがては空前絶後の「地中海帝国」を築きあげていきました。彼らローマ人は、そうして手に入れた属州(19世紀の植民地のようなもの)から無尽蔵に入ってくる富を湯水のように使い、贅の限りを尽くしていきます。

 富と食糧は満ち溢れ、すべてのローマ市民には食糧(パン)と娯楽(サーカス)が無償で与えられ、運動場・図書館・食堂まで併設された豪華な浴場施設(今でいえば一大レジャーランド)が各地で無料開放され、下々の者に至るまで働かずとも飢えることはなくなり、貴族などは食べきれない豪華な食事を、喉に指をツッコんで吐いては食らい、食らっては吐くを繰り返す有様。

次ページ 近世スペインの場合