残業を減らすためにはどうしたらいいか。仕事量が従来と変わらないとすれば、一人あたりの生産性を高めるしかありません。そこでiPadを大量導入しました。

 それまでのわが社の営業担当者は、お客様からご注文をいただいたら、帰社してから伝票を起こしていました。これが時間的なロスを増やし、その結果、残業を増やす大きな原因になっていたのです。

 いまわが社の営業担当者は、お客様のもとからiPadで自社のホストコンピュータにログインして、その場で作業をすませています。iPadは社員はもとよりパート・アルバイトにも1台ずつ持たせましたため、ざっと600台以上。かなりの投資でしたが、残業代を大きく圧縮できたので、もう充分に元は取れました。

 また、残業を「させない」ための方策として、21時以降はホストコンピュータとの接続を強制的に遮断しました。さらに念を入れて、わが社と契約している警備会社にお願いして、玄関の施錠時間のログを提出してもらいました。これを元に、遅くまで仕事をしている社員に私自らが直接注意もしました。

武蔵野の社員の残業時間は月に25時間程度

 こういうことは経営者が行なうのが一番いい。わが社のような営業主体の会社にはよくあることですが、多少は体育会的で、「俺より先に退社してはいけない」「俺より後に出社してもいけない」とでもいうような、まるで昔の流行歌のような価値観を持っている管理職がいるからです。一般社員はどうしてもそれに引きずられる。しかし経営者自らが「残業してはいけない」といえば、そんな旧いタイプの管理職も黙らざるを得ない。

 とにかく八方手を尽くして残業の短縮に取り組んできました。結果、現在のわが社の残業時間は、一般社員で月に25時間程度、一番多い社員でも40時間です。それまでは(ありていにいえば)みな労働基準法ぎりぎりのところまで残業していたから、これは長足の進歩といっていいでしょう。

 ただ、ここで悩ましい問題が起こります。残業が減れば当然、手取り額が減り、それはそれで社員の満足度が大きく下がる。ではどうするかといえば答はひとつしかありません。給与テーブルを改善してベースアップをし、賞与も平均で20パーセント上げました。かくして残業代は減りましたが、社員個々人の可処分所得はむしろ増えています。これは会社にとっては少なくない負担ですが、それでも社員に辞められる損害のほうがよほど大きいというのが私の見解です。