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他人と過去は変えられない、しかし自分と未来は、変えられる

 後にこの事故は駐車場管理人のミスとビルの構造的欠陥によるものであることが判明したため、わが社の金銭的負担はほとんどなくて済みました。しかし全容が解明されるまでは、さしもの私も「終わりだ。今度こそ武蔵野は終わりだ」と、夜も眠れないほど苦しんだ。しかし、こうした経験は現在すべて私の財産となっています。あのとき、どうして経営危機に陥ったのか。そしてどうして立ち直ることができたのか。それを逐一トレースすることで、的確な経営指針が得られるからです。

17年間の長期連載、心より感謝申し上げます

 止まない雨も明けない夜も、いままで一度もなかった。現在、あなたが直面している問題だって、わたしがかつて経験した悩みと同じことです。歯を食いしばってやり過ごし、そして時には周囲をうんざりさせながら、なんとか乗り越えてください。その辛い体験はあなたにとってかけがえのない財産になる。そう考えることができれば、あらゆる人にとって「無駄な過去」は存在しないことになります。

 あなたは「あのとき、ああしていれば良かった」「そうすればこんな思いはしなくて済んだものを」なんて考えて後悔したりはしていませんか。しかし、ああ「しなかった」からいまのあなたがあり、いまこんな思いを「している」から未来のあなたがつくられます。前段の「あらゆる人にとって『無駄な過去』は存在しない」をもっと強くいえば、あらゆる人にとって「過去はすべて善」です。

 他人と過去は変えられない。しかし自分と未来は変えられる。いま、わが社がおおむねうまく行っているのは、過去の失敗を教訓として怠らず学び、小さな改善を大量に重ねてきたからです。いまの悩みや苦しみも、いつかは過去のものになります。それが今後の糧となるか否かは、その悩みや苦しみの中からなにをつかみ取れるかにかかっています。

 さて、『日経ビジネスオンライン』の大幅なリニューアルにともないまして、今回をもって私の連載もいったんお休みを頂戴することになりました。2001年、いまは無き『SAFTY JAPAN』という日経BP社の媒体で連載が始まって、以降は発表場所を転々としながら実に17年。きら星のごとき識者や著名人が健筆を振るう日経BP社の媒体にあって、私のような落ちこぼれがかくも永きにわたり連載を続けることができたのは、ひとえに読者の皆様からのご支持のたまものと考えております。連載を終えるにあたり心より御礼申し上げます。またどこかでお目にかかる機会のあらんことを心より願っております。

 平成最後の年始。皆様お風邪など召されませんようくれぐれもご自愛いただき、よいお年をお迎えください。ありがとうございました。

(取材・構成=諏訪弘)