事実、本稿執筆にあたって私は近所のコカ・コーラの自動販売機を調べてみました。それは30品目を蔵する大型のものでしたが、売られている飲料のざっと半数はコーヒー、次いでお茶。残りはスポーツドリンクやフルーツ飲料といった商品構成で、肝心のコーラはたった2つしかありませんでした。なんと、一番少ないのが他ならぬコーラ。CCBJはもはや炭酸飲料水の販社ではないのです。むしろ社名は「コカ・コーヒー」「コカ茶」がふさわしいくらいの状況ではありませんか。

 記憶をたぐるに、つい20年くらい前まではこんなことはなかったように思います。当時、自動販売機の少なくとも3分の1くらいは、あの特徴的な赤い缶で埋まっていました。それがいつしか消費者の嗜好が変わり、以前ほど炭酸飲料の売り上げが見込めなくなってきた。おそらくCCBJの上層部はお客様ニーズを知り、そして「売れ筋」を中心に商品の構成を変更したのでしょう。

 お客様はコーヒーやお茶を求めているのだとわかれば、そちらを重点的に売る。CCBJの大企業が、自社のアイデンティティである看板商品すらためらわずに擲(なげう)って、お客様の需要に沿った商品構成に変えているのが単純にすごいではありませんか。経済紙や経営指南書などにはよく「お客様目線が大事」みたいなことが書かれています。それを読んだ経営者や管理職も「うむ、確かにそうだな」なんて納得する。でも大部分は「納得しただけ」で安心して終わりです。実際、CCBJほどのお客様目線を持った企業はいったいどれだけあるでしょうか。

成功体験に拘泥していてはお客様に見捨てられる

 前頁で「(CCBJは)お客様の需要に沿った商品構成に変えている」と書きました。この「変えている」は、お客様本位の経営を実現するうえで非常に重要なキーワードになります。というのもお客様は分秒の単位で変化を続けているからです。

 昨日まで菓子パンばかりを好んで買っていたのに、今日からは一転して総菜パンしか買わなくなったり、あるいはいつものようにレジを通った瞬間、特になにがあったというわけでもないのに「ああ、今後はこの店には来るのは控えるようにしよう」と思ったりすることは、本当にごく普通にある。こういうお客様の(あえていえば)ごく気まぐれな変化にキャッチアップしていくためには、自社もお客様を上回るスピードで変化していかなくてはならないのは当然です。

 これも私の口癖のようなものなのですが、「業績が低迷している会社は、過去の成功体験をずっと引きずっていて、ビジネスのあり方をほとんど変えていない」。人間にとって過去は常に甘美なものですから、変えたくないという気持ちはわかります。しかしそれで現実・現場を見る目が曇ってしまうのは論外です。

 限られたマーケットの中で、お客様をライバルから奪い取るのがあなたの仕事です。あなたが変化を拒み、過去の成功体験に酔っているうちに綿密な市場調査をしたライバルが乗り込んできたらどうなりますか。あっという間にお客様を取られて倒産です。そうならないためには常に現場に目を向け、お客様を見て組織を変えていくことです。「変えたくない」もまた、自社都合をお客様に押し付けていることにほかならないのです。