ライバル企業との差別化は「人材」で行なう

 ここでもうひとつあなたに想像していただきたいことがあります。(あなたの目からすれば)低レベルなものであれ、部下全体の資質が少しでも向上すれば、それはあなたにとっては「メリットしかない」のです。

 私は、講演やセミナー、著述活動などでしばしばこんなことをいいます。「現在は、商品やサービスでは他社との差別化がはかりにくい時代です」と。売れる商品なら仕入れることができる。評判のいいサービスなら真似することもできる。つまりそこでは差別化はできにくい。ところが、育った社員は違います。これはちょっとやそっとのことでは真似できない。どうしたって人を育てるのは手間も時間もかかる作業です。会社にとっては最大の差別化要素になる。

 わが社の主業務であるダスキン事業は参入障壁が比較的低い業界で、都内だけでも200もの代理店があります。当然、ライバル企業はわが社のシェアを奪おうとしますが、今日までことごとく蹴散らしてきている。それはわが社が人材教育に惜しみなくコストを費やし、お客様の満足度を高め、「ダスキン武蔵野から買おう」と思っていただくことに成功しているからです。

 「差別化」は、会社の勝ち残り戦略の最重要のものという意識があるためでしょう、経営者はもとより管理職も「抜きんでた商品やサービスを開発して…」と力んで考えてしまうものです。お気持ちはわかりますが、現代の社会情勢、産業構造にあっては、それはよほど特殊な業種・業態でない限りはほぼ無意味です。他社との差別化は、なによりも人材ではかるのが一番確実で手っとり早い。あなたはこのことをしっかりと心に刻んでください。

“できる社員”に「業務マニュアル」を作成させてはいけない

 もうひとつ、「“ちょっとだけ”優秀な社員」にこそ、やらせるのがふさわしい仕事があります。「業務マニュアル」づくりです。

 どんな会社でも業務マニュアルはつくっているでしょうが、たいていは活用されていません。棚の隅で埃をかぶっているか、PCのハードディスクの奥深くに保存されたまま忘れられているものです(ほらほら、耳が痛い人もいるでしょう?)。それはなぜか。理由は単純です。業務に精通したベテラン社員にマニュアルを作成させたからです。

 なにしろ「マニュアル」だし、ベテランにやってもらったほうが確かなものができるだろう…。言葉面だけを見ればその通りですが、よく考えてください。業務を熟知している社員はマニュアルを必要としません。そんな社員に作成を担当させるとどうなるか。いうまでもありませんね。マニュアルを「つくる」こと自体が目的化してしまいます。「このマニュアルが活用される」という場面がイメージされないまま、マニュアルができあがる。