反発するタイプの社員は、将来有望です。(写真:ミラタス/アフロ)
「反発しないタイプ」が実は一番やっかい
上司が部下に業務上の指示を出したとき、部下の対応はおおむね3種類に大別できます。
ひとつのタイプは、素直に従って即座に実行するタイプ。私はこれまでたくさんの会社を見てきましたが、このタイプは全社員の15パーセントもいればいいほうです。普通はせいぜい5~10パーセントといったところ。25パーセントもいたら相当に優秀な会社といえます。
もうひとつは反発するタイプ。これは即実行タイプよりはいくらか多くて、10~15パーセントといったところでしょう。
そして最後のひとつは、反発はしないが実行も伴わないタイプです。これは割合としては一番多く、社員の過半数以上を占めます。
さて、ここで質問します。「即座に実行するタイプ」は理想的な部下像ですから問題ないとして、「反発するタイプ」と「反発しないタイプ」とでは、いったいどちらがあなたにとって厄介な人材でしょうか。
それは後者、「反発しないタイプ」です。彼らはあなたの指示を理解したから「反発しない」のではありません。下手に意見をいって叱責されたり、あるいは責任を負わされたりするのが嫌だから反発しないふりをしているだけです。そういう部下は表面的には指示に従う素振りを見せて、しかしあなたの目の届きにくいところでは手を抜くものです。
目先の利益を追うより、部下の成長のほうがずっと大切
こういう、実行しない&反発もしない部下を戦力にするには、とにかく仕事のチェックを念入りに行なって、怠けさせないようにするしかないでしょう。彼らの気持ちはどうあれ、指示したことを指示した通りに実行してくれるようになれば、あなたにとって問題はないです。前述したとおり、実行しない&反発もしない社員は「過半数以上」はいるので、管理職にとっては大仕事にはなりますが、やるしかありません。
一方、反発するタイプの社員は将来有望です。彼らの中に、いくらかでも建設的な意見や業務に対する積極性、問題意識などがなければ、反発心は生まれないからです。こういう部下をうまく御することができれば、あなたにとって心強い“武器”になります。
具体的にはどうするか。日頃からコミュニケーションを密にとる、勉強会を実施するなど方法はいろいろありますが、相応のポストなり責任なりを与えて好きなようにやらせるのがひとつの方法です。「そんなにいうのだったら、君自身がやってみなさい」というのです。初めてのことだから失敗もする。それはそれでいいです。彼らはその失敗体験から、無手勝流で成果を出すのがどれほど難しいかを学び、成長します。
彼が失敗すれば、あなたの部門にも相応の損害は出るでしょう。それもまたよしです。「そんな余裕はうちの社にはない」と思われるのなら、初めはリスクの小さなチャレンジからさせればいい。目先の利益を追うよりも部下の成長を促すほうがずっと大切です。正しい仕事のやり方にたどり着くまでには、時間がかかるものです。
かつて武蔵野にはパートタイマーの部長がいた
この話に関連した、わが社の具体的な事例を紹介しておきましょう。
もうかなり以前のことですが、常務が私にこんな相談を持ちかけてきました。「先日パートで入ったSさんが生意気で仕事にならないです」と。ところが私は、断片的に見聞きするSさんの仕事ぶりから、彼女が優秀な人材であると直感していました。そこで私はいいました。「君がSさんを生意気だというのは、それだけ彼女が問題意識を持って仕事をしているからだろう」。そしてSさんをチームリーダーに抜擢しなさいと命じました。
あまりの裁定に、常務は言葉を失っていました。おそらく本人はSさんの解雇や配置替えを期待していたのでしょうから、まあ当然ですね。私は、暫くして、社長権限を押し出し、Sさんを課長にしました。するとどうなったか。私の期待通り、Sさんは水を得た魚のように生き生きと仕事をし、職責に恥じない立派な業績を上げました。
「これで一件落着」と思っていたら、もう一波乱ありました。今度は別の経営幹部と不和が生じました。彼も「Sさんが生意気だ」と常務と同じことを言いました。しかし私はすでに彼女の実力は十分過ぎるほど分かっていたので、今度はついにSさんを部長に任命しました。世にも珍しい「パートタイマー部長」の誕生です。
パートタイマー部長は、ご主人の扶養から外れないことが就労の絶対条件だったので、当時、仕事ができるように、働く時間を意図的に“改ざん”して仕事をしていました。月収が10万円に満たないパートタイマーが、その数倍の給料の正社員を采配する。それも1日に数時間だけ。なにやら一種の前衛芸術のようなすごい風景です。それでも彼女はプレッシャーに負けることなく、依然として高い成果を上げ続けたのだから大したものです。パート部長に育てられたのが、滝澤という部長です。
これでもう「生意気だ」という人は社内には完全にいなくなりました。下手なことを言おうものなら「じゃあ、君はSさんと同じだけの仕事ができるのかい?」と反論され、墓穴を掘ることになるからです。
「反発」の中には業務改善のヒントがつまっている
多くの人が誤解していることですが、実は指示に反発する部下や、あなたに「生意気だ」と思わせる部下は優秀です。彼らの言葉の中には、業務を改善するためのヒントがつまっている。それをすくい上げるのは管理職たるあなたの務めです。
私は過去の著作や連載、講演などを通じて、何度となく「社長の方針に従わない社員はいらない」「方針を素直に実行するのが優秀な社員だ」といってきました。だからでしょうか、私のことを「社員の意見には一切耳を貸さない無慈悲な独裁者」だと思っている方も少なくないようです。
しかし実際の私は、前述のごとく社員の反発については極めて寛容です。反発とは往々にしてコミュニケーション不足や説明不足から生じるものであり、それは紛れもなく社長である私の責任だと考えているからです。とかく世間の社長や管理職は、反発する部下を目の敵にして何かとつらく当たり、反発しない部下を大切にする傾向がありますが、実に本末転倒なことです。
(構成:諏訪 弘)
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