アンケートを通じて新卒社員が感じているギャップを探る
直接本人たちに訊く、ということについて話を続けると、株式会社武蔵野では新卒社員を迎えてから2~3カ月後にアンケートを実施します。いま彼らはなにを考え、どんな気持ちで働いているのかを把握して、組織の改善に活かします。内定者が入社前に思い描いていた「理想」と、入社して実際に働いてみた「現実」との間には、必ずギャップがある。このギャップを放置していると、それは早期退職の大きな原因になるからです。
設問は全部で15。回答は無記名ですから、新卒社員も比較的安心して本音が書けます。アンケートは、わが社が新卒採用を始めたのとほぼ期を同じくして取っていますから、ほぼ四半世紀になんなんとします。これだけ長く同じアンケートを取り続けていると、新卒社員の傾向の変遷が見えてきます。
こういう質問があります。「いまの仕事のまま3年間異動がないとしたらどうするか」。社員は、本心では「つまらない仕事だな」「この管理職とは気があわないな」と思っていても、そこそこ真面目に仕事はする。それは「3年もすれば自分は異動になっているだろう」という希望を持っているからです。
では、もしその希望がなくなったらどうするか。辞めるのか、続けるのか。ここに、新卒社員が自社をどう受け止めているかが如実に現れます。仕事は退屈でも、あるいは管理職とはそりが合わなくても、なにかそれを上回る魅力が組織にあれば彼らは「続ける」でしょうし、そうでなければ「辞める」でしょう。経営者としての理想をいえば、もちろん「続ける」と回答してほしいところ。ですが現実はそんなに甘くはなく、従来は「辞める」が「続ける」を上回っていました。
残業をなくす取り組みを続けていたことが奏功した
ところが2年前から傾向が変わりました。「辞める」と「続ける」とがほぼ拮抗するようになったのです。これは新卒社員の満足度が向上している証拠です。
どうしてそうなったんだろう、と考えたらひとつ思い当たりました。わが社は2年前から残業をなくす取り組みを続けており、現在では一番多い社員でも月に40時間未満までに改善されている。これが厚遇よりも余暇や私生活の充実を望む昨今の新卒社員にうまくマッチしたのです(アンケートでは退社時間についても質問していますが、実に75パーセントが「(帰宅時間は)早い」「普通」と回答しています)。
「(仕事を)続ける」と回答した人には、その理由についても自由回答式で質問しています。すると「お客様と接することが楽しい」「ルート営業が楽しい」と、「楽しい」というキーワードが頻出するようになっている。これはここ2年ではっきりと出てきた特徴で、過去には一度もありませんでした。
以上からなにがいえるのでしょうか。
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