ここで現実的な話をすると、売上が倍になったからといってポストの数も倍になる企業はまず存在しません。売上の推移とポストの数は必ずしも比例関係にはないからです。それは天下御免の中小企業のわが社も同様ですが、少なくとも当時の社員はそう思い、夢を持ったのです。「俺にも昇進のチャンスがあるぞ」「給料が上がるかも」などと、こういっては語弊もあるでしょうが、的外れな夢を。
しかしそれがどれほど的外れなものであれ、夢は常に必要です。人は夢なくしては決して努力しないです。無名高校の月並みな野球部でも、甲子園に近付きたいという夢があるからこそ激しい練習ができる。それと同じです。
「売上を倍にする」と宣言した5年後の1995年、わが社は公約通りに売上を倍にしました。バブル経済がはじけた直後の厳しい環境下にあっても毎年15%を超える成長を維持できたのは、社員が夢を持って働いてくれたおかげです。案の定、ポストの数は倍とまではいきませんでしたが、まずまずのレベルで役職を増やすこともでき、大勢の社員が昇進・昇給を果たしました。「課長」「部長」という夢は、一般社員にとっては一番身近なものです。それをやる気を引き出す仕組みに利用しない手はありません。
あなたが管理職の立場なら「5年後の売り上げを現在の倍にする」と発表するのは難しいでしょう。役職を増やしたり、そこに部下を配置したりする権限もないかもしれません。しかしそうだとしても、部下に夢を与えることはできます。自分の会社では、どうしたら昇進できるのか、どうしたら給与や賞与が増えるのかを部下に教えるのです。
部下の仕事をきちんと管理していれば、「おっ、A君はあと××万円売り上げたら評価が上がり、給与テーブルが一段アップするぞ」などとわかるタイミングが必ずあります。そうしたらすぐに彼をつかまえて、そのことを伝えてください。あとちょっとで大きな成果がつかめると知ったら、人は死にもの狂いで努力します。また、そうやってアドバイスをくれたあなたに彼は深く感謝をします。このように人は、ゴールがどこにあるのか、あとどれくらい頑張るとご利益が得られるのかがわかると、やる気を出します。
部下の頑張りを認めること、その頑張りに報いる
もうひとつおすすめしたいのが、仕事に「ゲーム感覚」を持ち込むことです。これもまた昔話をさせていただきます。
わが社は定期的に、支店対抗の販促キャンペーンを実施しています。キャンペーン期間中、一番多く売り上げた支店には部門賞として金一封が渡され、表彰も行ないます。キャンペーン結果は昇進・昇給にも大きく影響するので、支店長としてはなにがなんでも一番になりたいと思う。しかし、すべての支店長が同じように思って努力をするので、トップになるのはそう容易なことではありません。
Powered by リゾーム?