(写真=プラナ / PIXTA(ピクスタ))

 以前の当連載で、私は「売れようが売れまいが、とにかく販促は続けなくてはいけない」という内容の記述をしました。今回はそれを補足する話をします。実はくだんの原稿が公開されてから、ふと思い出したことがあります。

 10年前のことでしょうか。私はある大手ビジネス系出版社から、一冊のビジネス書を上梓する機会に恵まれました。当時すでに出版業界は景気のいい状態ではありませんでしたが、幸いなことにこの本は大ヒットしました。何度目かの増刷が決まったところで、出版社が慰労会を催してくれました。場所は新宿・歌舞伎町。出席したのは私のほか、担当編集者・版元の管理職・営業担当者など4名でした。

 2時間ほど楽しく飲食し歓談したところで、私は「このままご馳走になるばかりでは悪いなあ」と思いました。そこで二次会の費用は私持ちで、ドレスを着た若いお嬢さんが接客してくれるお店に皆さんを案内しました。ここで、一時間ほど楽しくおしゃべりをして、その日はそれでお開きです。

 数カ月後、私は別件の用事で当該書籍の担当編集者(以下Aさんとします)に会いました。彼は開口一番こう言いました。

 「いやあ小山さん。以前連れて行っていただいたキャバクラ、先日私も個人的に行ってしまったんですよ」

「ええっ?」

 私は一驚を喫しました。私はAさんとは付き合いも長いのでよく知っているのですが、彼は稀に見る恐妻家で、とてもそんなところに1人で行けるような人ではないのです。また(こういうことを書いたからといって嫌味とは思わないでいただきたいのですが)私がお連れしたのは、その手の有名店・高級店がひしめく歌舞伎町の中にあってもナンバーワンのお店で、決して「お安く」はない。Aさんはそれなりの給与も得ていたが、なにしろ先年に第一子が生まれたばかり。お小遣いだってあまり余裕はないはずでした。

販売は確率、「当てる」ためには回数を重ねるしかない

 どういうことかと思って質問しました。「Aさん、なんで再訪したの?」。聞けば話は単純で、彼についたキャスト(というのですよ。いまどき「キャバ嬢」ではない)から大変な営業攻勢を受けたからでした。

 私は、名刺を渡すほど甘ちゃんではないです。

 キャバクラでお客様は、よほど横柄とかよほど挙動不審とかでないかぎり、キャストにメールアドレスや電話番号を聞かれます。それはお客様に好意を持ったから…では無論なく、後から営業をするためですが、いい感じに酔っぱらっている男はそれと気づかないから鼻の下を長くして教えます。