ということは? そうです。会議で素晴らしいアイデアが出て全会一致で実行することになっても、それをお客様が受け入れてくださるかどうか(つまり、売れるかどうか)はわからないです。あなたがこれまでの経験から得られた知見を駆使して最善手を打ち出したとしても、お客様がそれを拒む場合は普通にある。なぜならばお客様が(「経営環境」が)変化するスピードは、往々にして企業の変革スピードよりも早いからです。

 私とて会議が不要とまでは申しませんが、この点を認識せぬまま甲論乙駁(こうろんおつばく)で延々と話し合うのは会議ではありません。あえていうならそれは「怪議」です。考えたり議論したりは、本質的な意味での仕事ではない。それは一円にもならないからです。きちんと売り上げを出し、利益を挙げること「だけ」が仕事です。

「お客様に訊く」は強力な差異化要素になり得る

 ちょっと話が脇道に逸れてしまいました。「お客様に訊く」に戻します。

 商品なりサービスなりが売れるのはもちろん喜ばしいことです。ところが問題は、多くの管理職は(ともすれば経営者も)売れた、ああ良かった、で終わりにしてしまい、「その先」に行こうとはしないでいることです。これではいけない。そのお客様はなぜお買い上げくださったのかを探り、それを横展開し、いっそうの売り上げ増をはかる、それが管理職の仕事です。

 本稿をここまでお読みになって容易に察しもつくと思いますが、「なぜお買い上げくださったのか」は、会議でいくら議論しても確かなところはわかりません。お客様に直接そう訊くのが一番確実で手っとり早い。そうである以上、あなたはお客様のところに行って(あるいは部下を向かわせて)それを訊くべきです。「なぜお買い上げくださったのですか」と。

 「そんなやりかたがあるのか?」。私にはあなたの業界がどんなところかはわかりませんが、あなたがそう感じるということは、ライバルはお客様に直接訊くなんて真似はしていない証拠でしょう。是非やってみてください、それはライバルとの強力な差異化です。

 「お客様は答えてくれるもなの?」。もちろんすべてのお客様が愛想よく答えてくださるとは限りません。しかし一般に人は、営業担当者の弁を一方的に聞かされるよりは自ら話すほうをずっと好みます。つまり、お客様と相応のコミュニケーションさえ取れていれば、答えてくださいます。「なぜお買い上げくださったのか」くらいのことは、回答が負担になるような質問ではないからなおさらです。

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