仕事に人が張りつくのは正しいが、仕事に時間を張りつけてはいけません。やるべきは逆で、時間に仕事を張りつけなくてはいけない。

 このことを理解しやすくするために、学生時代の時間割を思い出してください。一時間目は国語、二時間目は体育というように、〇時から□時まではこの教科、とプログラムが決まっています。これが「時間に仕事を割り振る」状態です。この仕組みのおかげで一人の先生が何十人という子どもを管理できる。もし逆にしたら学級は崩壊するでしょう。

 ところが、その崩壊状態を会社では多くの人がやっています。先述したように、この仕事が終わったらあれ、あれが済んだらこれ、というように「〇〇が終わったら」という発想で進めている。これではいつまでたっても仕事が進まないのは当然です。人間は、締め切りがないと全力が出ない性質を備えているからです。

 あなたの部下がそういう状態(「〇〇が終わったら…」という発想)なのは、しかたがありません。しかし、あなたが管理職として部下を育てるのであれば、部下のそういう状態を絶対に見逃してはいけません。「この仕事は13時までにやりなさい」「この作業は16時までに済ませなさい」と、無理やりにでも時間に仕事を割り振ることです。

あなたが部下を駆り立てるのは「温情」である

 時間が区切られると、人間は集中力が高まります。指示されたもの以外に手を出す余裕がなくなるからです。要は怠けられなくなる。しかも不思議なもので、それまで迷っていたり悩んだりしていたことも簡単に決められるようになります。迷いや悩みは仕事ではありませんから、これはまったく好都合なことです。つまりは時間に仕事を張りつけるようにすると、これまでさぼっていた時間がなくなる。

 中には「マイペースで」などと寝ぼけたことをいう管理職もいますが、とんでもない話です。マイペースとは「さぼれ。楽をしろ」を体よく換言しただけです。事実、経営者は「個々のペースで好きに仕事をしろ」なんて甘っちょろいことは絶対に思っていません。マイペースではなく会社が必要とするペースで仕事をさせる、それが管理職の責任です。そのためにはハードルをどんどん上げていかなければなりません。それができないようでは、管理職の資格はない。

 部下は伸びないのではありません。駄目な上司が伸ばしていないのです。無能な上司が、成長の可能性という芽を摘んでしまったのです。

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