担当者も「これは思ったより大ごとだ」とようやく悟った。「すぐに上の者と相談して、再度ご連絡を差し上げます」といって、いったん電話を切りました。数時間後、AさんのもとにB社の役員から電話がありました。「この度の著作権侵害の件についてお詫びをいたしたく、これからお伺いさせていただきたい」。Aさんはそれを了解しました。すると本当にその日のうちにAさん宅にB社の役員が2人来たのです。そして真摯な謝罪と著作権侵害に至った経緯、再発防止の取り組みについての丁寧な説明を受けました。

 Aさんは怒りの矛を収め、「B社のウェブ担当者が処罰を受けないようにする」ことを条件として和解しました。Aさんにそこまで気遣わせたとは、それだけB社役員の対応がしっかりしていたということでしょう。ともあれこれにてクレームは解決です。「念入りなことに」というべきか、役員の訪問から数日後にはAさんのもとにB社社長の名前で詫び状が郵送されてきました。さらにB社のウェブサイトのトップページには、二週間にわたりAさんの著作権を侵害したことに対するお詫びの文言が掲載されました。

「悪いこと」はすぐに報告・共有しないと危機に

 私はB社の対応を「99点」と評価します。つまり、ほぼ満点です。

 減点ポイントはなにか。ふたつあります。まず、Aさんの抗議があってから返事をするまでに(色々な事情はあったのでしょうが)2日も空いてしまった。これは宜しくない。お客様はこちらの不手際で傷ついているのですから(だからこそのクレームです)、初動が遅れたら遅れるほど状況は悪くなります。クレームがあればその日のうちに責任者が(最低限でも)電話を差し上げ、謝罪の意を伝える。これが鉄則です。

 もうひとつの減点ポイントは、B社の担当者が内々に、かつ独断でクレームを片づけようとしてしまった。たぶん担当者は著作権に関する知識があまりなく、だからこれがシリアスなクレームだとは認識できなかったと推測します。もし彼が、もう少し立場が上(=経験豊富な)の者のアドバイスを仰いでいれば、Aさんの感じた不愉快や傷心に寄りそうような対応もできたはずです。とにかくクレームに対しては「大変だ、大変だ」と大騒ぎして「事」を「大」きくし、スピードで解決に当たることが肝要です。

 「私の不手際でこれこれのクレームを発生させてしまいました」と上長に報告するのは、直接的に自分へのマイナス評価にもつながりかねないわけで、どうしても「隠しておきたい」という心理が強く働く。それはもう当然のことで、一概には責められません。

ほめられたことは報告しなくたっていい!

 会社は「お客様にほめられた」とかいった「いいこと」はべつに報告してくれなくても構わないのですが、お叱りを受けた・クレームを頂戴したといった「悪いこと」はすぐにでも報告してもらわないと困る。なぜならばそれで会社が大損害を受けたり、最悪の場合は倒産したりすることもあるからです。

 だからわが社では、「クレームを発生させたことの責任は一切問わない。それで評価を落としたりもしない。しかしクレームの報告がなかった場合は賞与査定を大きく下げる」ルールです。本稿をお読みのあなたにはさすがに賞与査定をどうこうできるような権限はないでしょうが、それでも部下が自分の失敗を躊躇なく報告できる雰囲気はつくっておく必要があります。