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 クレーム。まっとうな企業活動をしていても、また名の知れた超エリート企業であっても、「絶対に」避けられないもののひとつです。わが社はなにしろ天下の落ちこぼれ集団ですから、「創業以来、クレームの発生しなかった月はない」と言っていいくらいです。さすがに最近は少しは改善されてきましたが、一番ひどかったころは私の週の半分をクレーム対応に費やしていたこともありました。あなただってお客様のもとに出向いて頭を下げたことは一度や二度ではないはずです。

 ところでビジネス書・雑誌などでは、しばしば「クレームは業務改善のチャンス」とか、「クレームを梃子(てこ)に、お客様をいっそう自社のファンにさせる」とかいった内容の記事を目にすることがありますね。これは真理で、クレームは(見方を変えれば)お客様が「ここを直しなさい」と教えてくださっているものに他なりません。またクレームに真摯に対応することは「わが社はお客様が大切です」という強力なアピールになります。それはお客様のロイヤリティを大きく高めます。

 こうしたことを実現するためには、場あたり的な対応では駄目です。いくらあなたが真摯に事態にあたろうとしていても、ことクレームに関しては「正しく」対応しなければかえってお客様の不興を買ってしまうことになる。と、このように書いたところで、ひとつケーススタディをご紹介しましょう。私が懇意にしているフリーランスの編集者・Aさんの体験談です。

 その日、Aさんはいつものように仕事もそこそこにネットサーフィンにいそしんでいました。どういうきっかけだか、とあるハイブランドショップ(以下B社とします)の読み物ページにたどりついたところで、Aさんは目を疑いました。というのは、遡ること10年ほど前に制作・発表した記事が、写真も文章もほぼそのままに転載されていたからです。これは(法律上認められている)引用ではなく、もうはっきりと著作権侵害だ。そう判断したAさんは、B社に抗議の電話をかけました。

二名の役員が直々に謝罪に来る

 Aさんは電話口に出た女性スタッフに事情を伝え、早急な善処と連絡がほしい旨を伝えました。翌々日、B社のウェブ担当者から電話がありました。若い男性の声だったそうです。

「どうもこのたびはご迷惑をおかけしまして」
「で、どうしてくださるんですか」
「どうもすみません。先ほど削除しておきましたから」
「え、それだけですか?」
「だから削除しましたって」

「その万引き犯と同じことを御社はしたのだ」

 その声色ややりとりからAさんは、担当者は「当該記事を削除さえすればいいのだろう」くらいの軽い気持ちでいる印象を感じ取りました。さあ、Aさんの怒るまいことか。彼は語気を強めてB社の担当者にいいました。「そんな軽いお気持ちでいていただきたくはない」「御社が店頭で万引き犯を捕まえたとして、彼が『すみません、品物はお返ししますし、もういたしません』といったら見逃すのですか。警察に突き出すでしょう」「その万引き犯と同じことを御社はしたのだと認識していただきたい」。