もっとも学生だって、普段は縁のないスーツに袖を通し、面接では「御社の将来性に惹かれまして」などと心にもないことをいいます。それに我が社は迂闊にも騙されたわけです(騙した連中はいまや我が社の要職を占めています)。就職活動・新卒採用は「狸と狐の化かしあい」という側面があることも確かですが、だとしても少なからぬ新卒社員の期待や希望を挫いてしまったことや、数千万円単位の採用コストを無にしてしまったことなどを考えると、まったく慚愧に堪えません。

「優秀な人」より「気が合う人」の採用で業績が伸びた

 わたしが自社の新卒採用の誤りに気づいたのが10年くらい前のことでした。下手に取り繕うから、新卒社員のギャップも大きくなると。であれば最初から、自社のありのままの姿を見せておくに越したことはない。そこで説明会の類は必ず本社内で実施して、仕事内容や各種数字の公開、支店の見学会なども積極的に催しました。

 また内定者にはインターンを経験してもらいました。これには3つの目的があります。我が社の業務内容を実地体験してもらうことで入社以降のギャップを少なくすること。早い段階から我が社の文化になじんでもらうこと。先輩社員とのコミュニケーションを取ってもらうこと。以来、我が社の新卒定着率は飛躍的に上向きました。それも当然でしょう。ありのままの我が社を見せて、体験してもらって、それでもなお「武蔵野に入社したい」と望んだ人材なのですから。

 また、わたしのスピーチもがらりと変えました。それまでは学生に迎合して「こういう人材を求めています」「こういう人に入社してほしいです」と述べていたのが、「こういう人には来ていただきたくありません」と、はっきり述べます。たとえば、「一緒に遊んで楽しくない人はエントリーに及びません」「卑怯な人は不要です」「内定を3つ貰ったら我が社を断ってください」云々。早い話が、資質の優劣ではなく、気が合う・合わないで採用を決めているのです。