会社にあって「長所」と言うと、ともすれば語学力やIT関連スキル、事務処理能力などが連想されるでしょう。それらはもちろん大きな長所であることは私も否定はしません。しかし会社が社員に求める長所とは、必ずしもそんな大それたものばかりではありません。単純な話、礼儀正しく挨拶ができるとか接客が好きとかいった程度のことでも、会社にとっては大切なあなたの長所です。

 いや、むしろ日常業務においては、そのほうがずっと強力な長所になるといってもいいでしょう。留学体験やMBA(経営学修士)の取得がそのままお客様の購買につながるのはよほど特殊な業界でしょうが、「あの営業担当者は感じがいい」という印象を受けて商品の購買に至るのはごく普通にあることだからです。

 逆に短所は、それがよほど致命的なものであれば話は別ですが、あまり頓着する必要はありません。身も蓋もないことを書きますが、短所は直らないです。死ぬ思いで頑張ってようやく人並になれるかどうか、短所とはそういうものです。

 えっ、「人並になれるのならいいじゃないか。まさに俺は人並じゃないことに悩んでするのだから」ですって?

 はい、残念でした。お客様が評価してくださるのは常にあなたの長所だけです。時間は有限です。なんともならない短所をなんとかしようとすれば、あなたの長所に磨きをかける時間は減る。当然、虻蜂取らず(あぶはちとらず、二つのものを同時に取ろうとして両方とも得られない)の結果に終わる。あなたが真に嘆くべきは「短所があること」ではありません。短所を圧倒するくらい長所を伸ばしてやろうと、大胆に「気持ちを切り替えられないこと」です。

 あなたは、自分が口下手なことに悩んでいるのかもしれない。契約を取るのに失敗したのはそのせいだと考えているのかもしれない。しかし、そうだとすればあなたには、能弁の才能と引き換えに、お客様に対する入念なホスピタリティとか、抜きん出たご提案ができる資質などが備わっているものです(人間とはそういうものなのです)。そうした資質を圧倒的に伸ばしてごらんなさい。するとあなたの訥弁も、お客様にとってはむしろ好ましいものに錯覚されて映ります。それができればビジネスとしては「勝ち」です。

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