いま、あなたの許にいる新卒社員は、なにしろあなたの会社に入社しおおせたくらいですから、基本的な能力が劣っていることはまず考えられない。しかし「能力がある」ということと「仕事ができる」ということもまた似て非なるものです。能力を仕事で発揮するためには相応の経験が必要になるわけですが、現状、彼(彼女)にはその経験がほぼゼロなのですから「相手はまるで仕事ができない人材だ」と考えてちょうどいいくらいです。

新卒社員のあなたへ――「理不尽や不条理とうまくつきあいなさい」

 新卒社員はいったいどれくらい仕事ができないのか。身内の恥をさらすのも内心忸怩たるものがありますが、わが社の場合でいうと、まずもって「正しく商品を配達する」ことができませんね。それから「正しくお釣りをお返しする」もできない。「きちんと領収書を書いてお渡しする」とか「別の商品・サービスをお勧めする」とかなんて、もう夢のまた夢という感じです。そんな馬鹿な、と思われるでしょうが、毎日20件、30件とお客様のもとにお邪魔していると、どうしても疲れて集中力が途切れ、こうしたつまらないケアレスミスが頻発するのです。

 だからあなたは「10の仕事を命じたら、6~7も挙げてくれたら充分」と考えておくべきです。それから難易度10の仕事は振ってはいけません。事前に手を入れるなどして5~6くらいの易しさにして渡すべきです。そうでもしなければ仕事に慣れていない新卒社員は簡単に潰れます。

 最後に、本稿をお読みのフレッシュマンのあなたにアドバイスをしておきます。

 あなたはいま、がんばって仕事を覚えよう、仕事ができるようになろうと日々気持ちを新たにしていることでしょう。大変けっこうなことです。しかし私はあえていいましょう、「適当におやりなさい」と。張りきってはいけません。闘志は長続きはしないものです。どうせあなたの職業人生はあと40年くらいはあるのですから、いまはむしろ「消耗しないこと」に気持ちを全振りするべきです。

 お読みになってすでにご理解いただいていると思いますが、本稿は管理職に向けて「新卒社員に気を遣ってやりなさい」という内容になっています。なぜわざわざそういう一文を起こさなくてはならなかったかといえば理由は簡単、気遣いができていない管理職が少なくないからです。いまはまだ研修だのなんだのでよく見えていない部分もあるかもしれませんが、あなたの直属の上司がそういう駄目管理職である可能性は充分にあります。もし不幸にして、駄目管理職に当たってしまったらどうすればいいでしょうか。

 一言、「ラッキー」と思ってください。管理職が駄目ならあなたもしんどい思いはするでしょうが、苦労のぶんだけあなた自身の成長も早くなるからです。

 社会は、会社は、言ってみれば理不尽や不条理の集合体です。私はそれが正しいとは思いませんが、現実としてそういう状況はあり、そしてそれは一個人の思惑だけではどうにもならないものである以上、あなたが採るべき次善の策は理不尽や不条理をうまくいなす体さばきを身につけること、そしてできれば(理不尽や不条理と)友人になることだからです。

(構成:諏訪 弘)